
物流の効率化に向けてアウトソーシングを検討する中で、最も気になることといえば費用面ではないでしょうか。物流アウトソーシングの費用は、取り扱う商品の特徴などによって大きく変わるため、見積もりを取って比較検討することが重要です。
本記事では、物流アウトソーシングの見積もりを正しく評価するために知っておきたい、費用の内訳や相場のほか、見積もり依頼時に必要となる情報について解説します。
併せて、見積もりを比較する際のポイントなどについても紹介します。
目次
物流アウトソーシング、はじめの一歩!
最適な提案を受けるためのRFPとは?
1物流アウトソーシングの費用とは

物流アウトソーシングは、自社の物流業務を専門業者に委託することです。
入荷・出荷・在庫管理・ピッキング・検品・梱包・車両手配など、物流に関する一連の業務を外注することで、設備などにかかる費用を抑えて物流品質と効率を高められます。
物流アウトソーシングでは、各作業にかかる費用は取り扱う商品の種類や量、運用方法などによって変わり、算出方法も企業によって異なります。そのため、物流アウトソーシングを検討する際は、複数の企業から見積もりを取り、作業内容ごとの費用を洗い出して比較することが大切です。
物流アウトソーシングの見積もりにおける費用の種類は、毎月一定の費用がかかる「固定費」と、取り扱う商品の種類・量や作業量などによって費用が変動する「変動費」に分かれます。
2物流アウトソーシングの見積もりで提示される項目と費用相場

物流アウトソーシングの見積もりでは、項目ごとに費用が提示されるのが一般的です。
固定費と変動費に分けて、代表的な項目の内容と費用相場について解説します。
固定費
固定費は、季節要因や市場の状況などによって出荷量が増減したり、梱包方法が変わったりしても毎月一定の金額がかかる費用のことです。
一般的には、下記の3つの項目が見積もりで提示されます。
固定費は、毎月定額でかかるのが一般的ですが、固定費を無料にして完全な従量課金制にしている物流会社などもあり、企業によって金額はさまざまです。
システム利用料
システム利用料とは、物流倉庫での業務全般を管理する「倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)」の導入や運用にかかる費用です。WMSは、倉庫での作業に必要な情報である商品の種類・個数・入出荷予定日などを一元的に収集・管理・出力するシステムで、倉庫業務の効率化には欠かせません。
この項目には、検品に使用するハンディターミナルなどの、システム上必要な機器類の保守管理費用も含まれます。
システム利用料の相場は、1ヵ月あたり2万~5万円程です。
物流会社で利用するWMSには、すでに完成しているパッケージシステムを自社のPCにインストールして使用するオンプレミス型と、インターネット経由で必要な機能を利用するクラウド型があり、一般的にはクラウド型のほうが費用を抑えられる傾向があります。
業務管理費
業務管理費とは、倉庫での商品の管理に必要な費用です。
システム利用料とまとめて「基本料」として計上される場合もあれば、別途計上される場合もあります。
業務管理費の相場は、1ヵ月あたり1万~10万円程度です。
保管する商品を守るためのセキュリティの度合いなどによって金額に幅があります。
一般的には固定費に分類されますが、物流会社によっては商品の数量で金額が変動することもあるため、業務管理費の内容は必ず確認する必要があります。
保管料
保管料は、倉庫内で商品を保管するために必要なスペースの使用料です。面積や保管スペースの単位ごとに費用がかかり、「坪」や「棚」、商品を載せる荷役台を指す「パレット」などが貸し出しの単位になります。
企業によって用いられる単位は異なります。
冷蔵・冷凍の商品などは、保管料に電気代が追加されることが多いでしょう。
管理料の相場は、1坪あたり毎月4,000~7,000円程度です。倉庫の立地や保管の方法などによって金額が大きく変わります。
変動費
変動費は、取り扱う商品の量や種類などによって総額が変動する費用のことです。
自社でどの程度の作業量・商品量が発生しそうなのかを、事前に把握しておくことが重要になります。
見積もりで提示される項目としては、下記の6種類が一般的です。
デバンニング料
コンテナなどから、フォークリフトを使って荷物を降ろす作業を「デバンニング」といいます。
安全面が問われるフォークリフトでの積み降ろしには熟練した技術が必要なため、コンテナ1本などの作業単位ごとに費用が請求されます。
デバンニング料は、コンテナ1本あたり2万~3万5千円程かかるのが一般的です。手積みか、パレット作業かによっても異なります。
入庫料
入庫料とは、メーカーなどから送られてきた商品を倉庫に搬入する作業に対して発生する費用です。コンテナ・段ボール・宅配便など、商品の形態によって料金が異なります。
入庫料の相場は、1個あたり10~100円程です。商品が小さい場合、ケース単位で料金が決まることもあります。
検品料
検品とは、入庫した商品の品質をチェックする作業のことです。例えばアパレル商品では、汚れの有無、寸法、付属品の有無、品質タグの確認などが行われます。具体的な作業の内容のほか、数量の確認のみか、動作確認を含めるかによっても費用が異なるため注意が必要です。
検品料は、依頼する作業内容によって金額が異なります。
数量チェックのみで1個あたり10~30円程、動作のチェックを含めると1個あたり80~100円程が相場です。
出荷・ピッキング料
出荷・ピッキング料とは、注文が入った商品を、出荷のため取り出す作業にかかる費用です。
出荷数によって変動します。企業によっては、下記で紹介する「梱包料」に出荷・ピッキング料を含める場合もあるため、詳細は見積もりを見ながら確認しましょう。
出荷・ピッキング料は、1個あたり10~30円程が一般的です。挨拶状、サンプル商品、パンフレットなどの同梱物があると、追加費用が必要になります。
梱包料
梱包料とは、出荷が決まった商品をピッキングした後、段ボールなど指定された資材で梱包し、発送担当に引き渡すまでの作業にかかる費用です。
商品に同梱する送り状や納品書の発行費用は、梱包料に含まれているケースが多いようです。
ただし、ギフト対応が必要で、ラッピングや熨斗など特別な梱包を行う場合は、別途梱包費が請求される場合があります。
ギフト商品の量によっては、別途見積もりを取ることをおすすめします。
梱包料は、段ボール1個あたり150~300円程かかるのが相場です。商品の大きさや、梱包資材によって金額が変わります。
発送料
発送料とは、商品を出荷した後、消費者のもとに商品を届けるまでにかかる費用です。
物流アウトソーシングを行う物流会社は運送会社と契約しているため、最終的には運送会社に支払われる料金になります。
ほとんどの物流会社は大手運送会社と契約を結んでいるため、自社から発送するよりは運送費を安く抑えることができます。
また、取り扱う商品のサイズが運送費に大きく影響してくるため、今後の物流計画も含めて料金を検討することが重要です。
発送料は、1件あたり400~1,500円程かかります。
運送会社によって値段設定が異なるほか、配送地域、梱包サイズ、発送方法によっても異なります。
冷蔵・冷凍商品では、追加費用がかかるのが一般的です。
物流アウトソーシング、はじめの一歩!
最適な提案を受けるためのRFPとは?
3初回の見積もり依頼で、最低限必要な5つの情報

各社に見積もりを依頼する際、事前にまとめておきたいのが、下記5つの情報です。
この5点を具体的に数値化・言語化しておくことで、精度の高い見積もりを取ることができます。
EC通販で取り扱う商材

自社ECで取り扱っている商材を全てリストアップし、発送代行業者に伝えましょう。
業者側は商材を知ることによって、おおよその商品サイズや商品保管倉庫で必要な温度帯を把握することができます。
また、効率的な発送業務を行うための運用フローもイメージすることができます。
まとめると、商材から以下のようなポイントをくみ取って見積もりを作成しています。
- 取り扱う商品のサイズ
- 商品の保管方法や必要な温度帯
- 梱包や発送などの作業効率
月間発送件数

月間の発送件数は正確な数値を発送代行業者に伝えましょう。
上記1の商材と月間発送件数が分かるとECの規模感をイメージしやすくなり、発送作業を行うために必要な人員や、商品保管に必要なおおよその坪数を把握することができます。
細かな単価設定などの見積もりにも関わってくるため、具体的で正確な件数をまとめておくことが大切です。季節要因が大きい、セール頻度が多いなど、月毎で発送件数の変動が大きい場合は、そのような細かな情報も最初に伝えておくことが大切です。
見積依頼をする前に自社ECの商品についての発送情報を正確に把握しておきましょう。
発送サイズの比率・利用中の配送会社

見積もりを作成するにあたり、1注文あたりの配送サイズを把握しておくことが大変重要なポイントになるため、現在、EC通販事業者の皆さまがご利用中の配送会社と配送サイズの比率を伝えましょう。
例えば「ヤマト運輸利用で、60サイズが○%、80サイズが○%」などの伝え方ができると、見積もり時に運賃の試算がしやすくなります。
品番数・SKU数・在庫数・現物流倉庫の利用坪数

上記1の商材のリストアップと一緒に「品番数・SKU数・在庫数・現倉庫の利用坪数」もまとめておきましょう。
発送代行を請け負った際に、どのくらいの倉庫坪数が必要になるのか、どのような商品保管(ロケーション管理など)をするべきなのか、をイメージしながら見積もりの試算を出すために必要な情報になります。
EC通販の物流で今抱えている課題

自社運用の物流から外部の物流委託先を探していたり、委託先の切り替えを検討したりしているEC通販事業者は、何かしらの課題を抱えていることが多いかと思います。
どのような経緯や目的で委託先を探しているのか、今抱えている課題をしっかりとまとめて見積依頼をする際に伝えることが重要です。
- コスト削減
- 人員・リソース不足
- 稼働日を増やしたい
- キャパオーバー
- サービスレベルの向上(ギフト・品質など)
- リードタイムの改善
上記は一例になりますが、抱えている課題はさまざまです。
当社では、EC通販事業者様のお悩みや事業成長もサポートいたします。まずは漠然とした課題でも構いません。他社との差別化を図りたい、最適な対策を一緒に考えてほしいなど、些細なお悩みもお気軽にご相談ください。
4見積もり依頼後、次回ヒアリングまでに準備が必要な5つの情報
当社の場合、初回の費用見積もりのお問い合わせをいただいてから、さらに細かい情報のヒアリングをさせていただいております。営業担当から後日、電話もしくはメールにてご連絡をいたしますので、その際にぜひ準備しておいていただきたい5つの情報をご案内します。
特に複数の物流委託企業に見積依頼を出す場合は、発送代行業者各社の対応力を比較するときのポイントにもなりますので、希望する条件などはしっかりまとめておくことが大切です。
こちらでご案内する5つの情報を初回のお問い合わせ時に伝えられると、ヒアリングの際にはより深いお話ができるようになります。見積もりの精度も高くなるため、もし余裕があれば、初回の見積依頼時に準備しておくといいでしょう。
利用しているシステムの詳細

現在利用中のカートシステムや受注管理システムの詳細を伝えられるようにしておきましょう。倉庫管理システム(WMS)との連携が必要になるため、システム間連携の難易度を把握しておく必要があります。
利用中のシステム仕様によっては、この連携作業を行うだけでかなりの工数を要することもあり、見積もり内容にも関わってきます。認識のズレがないように、念入りな打ち合わせをしましょう。
1注文あたりの購入商品点数

作業工程を把握するために、1注文あたりの購入商品点数がどのくらいかという情報も伝えられるようにしておきましょう。
例えば、1注文あたりのSKU数が多いほどピッキング作業に時間がかかります。
まとめ買いしやすいEC通販サイトであるほど1注文あたりのピッキング・梱包にかかる時間は増えるでしょう。1注文あたりの購入商品点数を把握することで、作業工程を把握し、見積もりに反映しています。
希望する物流倉庫の稼働日

倉庫稼働日は発送代行業者によって異なります。平日のみ稼働する業者も多いですが、当社は土日祝日の対応も可能です。
特に平日以外の発送業務を希望される場合は、見積依頼の段階で対応可能かを確認する必要があります。
繁忙期や特別な条件のときのみ対応してほしいという希望があれば、この段階で伝えておきましょう。
必要な付帯作業の詳細

- セット商品の詰め合わせ
- ギフト商品のラッピング
- 熨斗やギフトカードの対応
- ささげ
一連の業務に必要となる付帯作業の詳細をリストアップしてみましょう。上記の他にも考えられる付帯作業はさまざまですが、その内容によって見積もり内容が異なります。
また、付帯作業を日常的に行いたいのか、スポットとして一定期間だけに行いたいのか、という希望も少なくありませんので、考えられる付帯作業をすべてまとめ、伝えられるようにしておきましょう。
入荷時の状態と確認事項

どのような状態で商品が入荷されるのか、入荷した際にどのような商品確認が必要になるのかによって、作業効率が異なり、見積もり内容にも関わってきますので、伝えられるようにしておきましょう。
例えば下記のような情報を事前に把握できていると良いでしょう。
- 商品の確認作業は、1個ずつ実施するのか?ケースごとに実施するのか?
- 確認内容はどのようなものが必要か?(数量 ・ 色 ・ サイズ など)
物流アウトソーシング、はじめの一歩!
最適な提案を受けるためのRFPとは?
5見積もりの算出方法は物流企業によって異なる
これまでお話した上記すべての情報をもとにして、見積もりの概算を算出し見積書を作成します。見積もりの算出方法は各社でさまざまで「作業一式で出す方法」と「明細単位で出す方法」の大きく2つに分かれます。
作業一式で出す場合は、一連の作業がまとまった金額で表示され、明細単位で出す場合は、1つひとつの作業にかかる費用が細かく把握しやすいことが特徴です。
当社では、概算シミュレーションで明細単位に見積もりをお出ししています。EC通販事業者の皆さまがイメージしやすいように、作業ごとに分かりやすいお見積書を作成いたします。
6見積もりを比較するときに大切な3つのポイント
発送代行業者に見積もりを依頼するときは、複数の業者に依頼して比較することが重要です。全国規模の業者や地域に寄り添った業者、特定のジャンルに強い業者などもあり、選択肢はさまざまです。
そして、費用の総額だけを見るのではなく、各作業内容に付随する費用を細かく算出して比較検討することが重要です。また希望する条件にどこまで対応してもらえるのかも、比較するうえで重要なポイントです。
各物流委託先からの見積もりを同じ条件で並べてみる
見積もりの形式は各社で異なるため、同じ条件で書かれていないと比較することを難しく感じてしまうでしょう。
そのような場合、各社の見積もりを同じ条件にした場合はどうなるのか、自分で計算し直してみることがポイントです。
例えば、作業一式の見積もりで「発送作業(送り状&ピッキング&梱包)○○円」と記載があるなら、明細単位の見積もりで「送り状・ピッキング・梱包」それぞれの単価の合計を計算してみます。少し大変な作業かもしれませんが、同じ条件にしてみることで、正確な費用比較が可能です。
物流委託先の対応力や柔軟性を考慮する
費用だけでなく、
希望する稼働日や付帯作業にどこまで対応してもらえるのか、発送代行業者の柔軟性は大きな比較ポイントになります。
他店舗ECとの差別化を図るうえで、オリジナリティのあるサービスを取り入れることは大切ですが、発送代行業者によって対応できる範囲は異なります。
また、シュリンク包装やピロー包装、オンデマンドプリンターなど特別な機械を使用しなければならない作業がある場合はそれを基準に比較検討しなければいけません。自社ECで実現したいサービスレベルと照らし合わせて、対応力の柔軟性で安心して任せられる発送代行業者を選びましょう。
当社では、熨斗やメッセージカードに対応したギフト商品や、豊富なバリエーションのラッピングなどにも対応可能です。
自社EC通販の将来性も考慮する
今後、多店舗展開をしたり、新商品の開発をしてバリエーションを増やしたりと、事業を拡大していくことをご検討であれば将来性も考慮し、事業規模が拡大したときでも対応ができる委託先を検討することが大切です。
委託先の規模(坪数)や人員、導入事例などを確認し、問題なく対応できるかどうかなども比較検討するポイントとしてチェック項目に入れておきましょう。見積依頼の段階で、拡大の可能性があることも伝えておくことができると安心です。
7まとめ:見積もりポイントを理解して信頼できる
物流サービスを利用しよう

発送代行業者によって対応力が異なるからこそ、見積もり内容をしっかり比較し、安心できる委託先を探さなければなりません。そのためには自社ECの状況や、商品情報をしっかりと把握し、見積依頼をする際には具体的で正確な情報を伝えることが大変重要です。
見積もり内容のほかにも、各社の対応力や将来性を考慮しながら、安心して任せられる委託先を見つけましょう。
当社では、EC通販事業者の皆さまがイメージしやすいように、作業ごとに分かりやすいお見積もりを、概算シミュレーションにて明細単位にお出ししています。物流のアウトソーシングをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
物流アウトソーシング、はじめの一歩!
最適な提案を受けるためのRFPとは?
サービスはこちら