ECビジネスが成長すると、物流業務にかかる負担が大きくなり、自社での対応が難しくなってきます。そこで検討されるのが、自社の物流機能を専門の会社に委託する「物流アウトソーシング」です。
これにより、物流センターやトラック、在庫管理スタッフの人件費といった先行投資をせずに、物流品質を向上させて消費者とより良い関係を作ることができます。
本記事では、物流アウトソーシングを導入する前に知っておきたい費用相場やその内訳、追加費用がかかるケース、費用検討時の注意点について詳しく解説します。併せて、料金プランの特徴やプラン選び・代行会社選びのコツについても紹介します。
目次
物流アウトソーシング、はじめの一歩!
最適な提案を受けるためのRFPとは?
1物流アウトソーシングの費用内訳と費用相場
物流アウトソーシングでは、一般的に以下の作業をプロに委託することが可能です。
最近では、こうした基本的な物流業務に加えて、受注処理や決済処理、カスタマーサポートといった関連業務も含めて代行するフルフィルメントサービスを提供する企業も増えています。
物流アウトソーシングをした場合にかかる項目毎の費用は、下記のようなものが一般的です。
項目 | 費用相場 |
---|---|
システム使用料 | 1ヵ月あたり2万~5万円程 |
業務管理料 | 1ヵ月あたり1万~10万円程 |
保管料 | 1坪あたり毎月4,000円~7,000円程 |
入庫料 | 1個あたり10円~100円程 |
デバンニング料 | コンテナ1本あたり2万~3万5,000円程 |
検品料 | ・数量確認の場合1個あたり10円~30円程 ・動作確認をする場合1個あたり80円~100円程 |
ピッキング料 | 1個あたり10円~30円程 |
梱包料 | 1個あたり150円~300円程 |
発送料 | 1件あたり400円~1,500円程 |
システム使用料
物流アウトソーシングでは、「WMS」(Warehouse Management System:倉庫管理システム)と呼ばれるシステムが使われます。WMSは、ハンディタイプの読み取り機器を使って、倉庫内でのあらゆる作業を効率化し、一元管理するものです。
WMSを導入すると、入荷管理・出荷管理・在庫管理・進捗管理などの煩雑な業務が可視化され、ものの流れを最適化することができます。WMSの使用料は、契約時に「基本料」として請求されることが多く、費用相場は1ヵ月あたり2万~5万円程です。
業務管理料
業務管理料とは、システム使用料とは別に、基本料として請求されることが多い費用です。
倉庫での作業で起こりうる落下・破損・盗難・紛失などから商品を守るためにかかる手数料で、荷物の量や出荷件数などによって変動する場合もあります。
基本的な価格帯は、1ヵ月あたり1万~10万円程です。
保管料
保管料とは、倉庫内で商品を保管するためのスペース利用料です。
1ラック、1坪といった単位で貸し出され、単価はサービス提供事業者によって異なります。
おおよその価格帯は、1坪あたり毎月4,000円~7,000円程で、土地代が高い都市部では高く、地方では比較的安い傾向があります。
入庫料
入庫料とは、荷物を倉庫に入庫する際にかかる費用です。
荷物1個あたり10円~100円程かかることが多いでしょう。ただし、検品をセットで依頼する場合はこの限りではありません。
デバンニング料
デバンニングとは、コンテナに積まれた荷物をフォークリフトで降ろす作業のことです。
フォークリフトを扱える人が限られ、安全で確実な作業には豊富な経験と高い技術が必要になるため、入庫料とは別途費用がかかります。
費用相場はコンテナ1本あたり2万~3万5千円程が平均的です。
検品料
商品の検品作業を依頼する場合も費用がかかります。
金額の目安は、数量確認だけなら1個あたり10円~30円程、動作確認をすると1個あたり80円~100円程です。個数が増えると費用がかさむため、検品を依頼するかどうかはよく検討する必要があります。
ピッキング料
出荷する商品を集めるピッキング作業にかかる費用が、ピッキング料です。
相場は1個あたり10円~30円程で、ある程度の個数をまとめて依頼することでディスカウントできるプランが用意されている場合もあります。
梱包料
梱包料とは、商品を段ボールや袋に詰め、破損を防ぐために緩衝材を入れる作業などにかかる費用です。相場は1個あたり150円~300円程で、ギフトラッピング対応なども委託する場合は、別途費用がかかります。
発送料
発送料とは、商品の配達を依頼した宅配業者に支払う料金です。
送り先までの距離、商品のサイズ、重さなどで料金が設定され、1件あたり400円~1,500円程度と幅広く異なります。
2追加費用がかかる可能性があるケース
物流アウトソーシングでは、基本的には前述したような費用が発生しますが、依頼する業務内容や商品の種類などによっては追加費用がかかります。
下記3つのケースでは、一般的に追加コストがかかることを認識しておく必要があります。
- 繁忙期や急な需要増への対応
- バーコードを貼らずに取り扱いを委託
- 冷蔵・冷凍保管が必要
繁忙期や急な需要増への対応
EC通販事業では、商品のメディア露出や、出店先の大手通販サイトでセールが行われる場合、一時的かつ急激に需要が増加します。こうした場合、アウトソーシング先も一時的に人員を増強して対応しなくてはなりません。人件費、管理費が増大する分、オプション料金を請求されることがあります。
また、同様に繁忙期がある場合も、繁閑の差や物量の増減に応じてアウトソーシング先で人員を調整する必要があり、時期による物流の差が大きい業界・業種では、繁忙期の費用として追加料金がかかる可能性が高くなります。
バーコードを貼らずに取り扱いを委託
倉庫管理システムでは、ハンディスキャナーで商品のバーコードを読み取って管理します。バーコードがついていない商品の場合、商品知識がない業者は仕分けにかなりの時間をとられるため、追加料金が必要です。
なお、業者によっては、バーコードの代わりに商品を特定できる商品コードや商品名の記載があることや、バーコード発行・貼り付けサービスのオプション利用を必須としている場合もあります。
冷蔵・冷凍保管が必要
食品や飲み物など、冷蔵・冷凍での保管が必要なものは、通常の倉庫で管理することができません。専用の施設が必要になるほか、鮮度の維持・管理にノウハウが求められ、かなりの労力がかかります。その分、一般的には割増料金がかかります。
このような商品を自社施設で管理しようとすると、膨大な初期投資と維持費用がかかる上、専門知識を持った人材も必要です。長期的な視点で、自社管理するかアウトソーシングするかを検討しましょう。
物流アウトソーシング、はじめの一歩!
最適な提案を受けるためのRFPとは?
3物流アウトソーシングの費用を検討する際の注意点
物流アウトソーシングの依頼を検討する場合、まず代行会社から見積もりを発行してもらい、その費用の項目と金額を検討します。
その際、依頼先選びに失敗せず、自社の状況に最適なコストに抑えるためには、下記の4つのポイントを意識することが重要です。
- 複数社の見積もりを取る
- 費用だけではなく効果とのバランスを見る
- 曖昧な費用項目がないか確認する
- 費用の単位を確認しておく
複数社の見積もりを取る
すぐにでも物流アウトソーシングを実行したい場合や、メイン業務に余裕がない場合、最初に問い合わせをした業者の見積もりだけを見て導入を判断したい場合もあるかもしれません。
しかし、費用相場で幅のある金額を紹介したとおり、それぞれの作業にかかる費用は業者によって差があります。できるだけ複数の業者に見積もりを依頼して、適正価格を見極めることが重要です。
また、見積もりの費用には、固定費と変動費があります。システム使用料や保管料は固定費ですが、物量によって料金が変わる変動費の項目も少なくありません。見積もりを取ったら、変動費の幅はどれくらいか、見積もりに含まれていない費用がないかといった点も忘れずに確認しましょう。
費用だけではなく効果とのバランスを見る
物流アウトソーシングを導入する目的は、作業の効率化やコストダウン、コア業務に人材を集中する適切な人員配置など、企業によってさまざまです。いずれにしても、できるだけ費用を抑えたいのは間違いありません。
しかし、費用の多寡にばかり目が行くと、本質を見失う可能性があります。
たとえ費用が安くても管理体制が不十分であったり、サービスの質が低ければ、アウトソーシングによって顧客満足度が低下することもありえます。
「何のために物流アウトソーシングをするのか」を忘れずに、費用対効果のバランスを探ることが重要です。
曖昧な費用項目がないか確認する
見積書を確認するときは、全体の費用感だけでなく、各項目の内容にも注目してください。どの作業を指しているのかわからない項目があれば、必ず内容を確認しましょう。
「◯◯一式」「◯◯など」といった包括的な書き方をしている項目にも要注意です。「一式」に含まれていない費用が後から発生するといったトラブルを防ぐため、曖昧な記載をそのままにせず明確にする必要があります。
費用の単位を確認しておく
意外と見落としがちなのが、費用の単位です。
例えば保管料なら、計算単位に下記のような複数のパターンがあります。
【保管料の計算単位のパターン】
- 保管に使う坪数をベースに「1坪あたり」で計算する
- 荷物を置く荷役台である「パレット」の使用数に応じて「1パレットあたり」で計算する
- 保管した荷物の個数ごとに「1個あたり」で計算する
一般的には坪単位での月額料金設定が多いですが、パレット単位、個数単位を採用しているケースもあるため、思い込みで判断しないように注意しなければなりません。
4物流アウトソーシングの費用が決まる料金プランの特徴
一般的に物流代行のサービス仕様には大きく2種類、「パッケージタイプ」と「カスタマイズタイプ」があります。まずはそれぞれの特徴をご説明しましょう。
料金プラン「パッケージタイプ」の特徴
入出荷ルールやデータ連携方法などが予め決められた物流基盤を利用するため、サービス内容がある程度パッケージ化されています。
中小規模のEC通販事業者を対象とされていることが多く、主なメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- 導入スピードが早い
物流代行会社によってあらかじめ定められたルールや条件に沿って運用されるため、見積・契約などをスムーズに進められることができます。そのため、導入スピードもぐっと短縮できます。 - 予算の見通しが立てやすい
決まった条件・ルールに沿った料金プランのため、月の平均的な出荷件数と出荷の多いサイズから、概ねの費用算出が出来るなど費用試算・予算管理がしやすいことも魅力です。 - 小規模でも導入しやすい
小規模からでもアウトソーシングしやすいサービス内容と費用構造になっているため、出荷件数が少ない中小規模のEC通販事業者や、これから通販物流を立ち上げるDtoC企業に最適です。
デメリット
- 提供サービス外の対応ができない
- カスタマイズが自由にできない
- ギフトラッピング等の付帯業務ができないことも
など物流代行会社によって定められた物流基盤に合わせた運用では柔軟な対応が難しいことが多々。そのため事業が成長する中で、新たな要望や課題が出てきたら、「カスタマイズタイプ」に切り替えるケースが主流です。
料金プラン「カスタマイズタイプ」の特徴
対して「カスタマイズタイプ」は、それぞれのEC通販事業者の課題・ニーズに合わせて、配送の種類や同梱物、サービスレベルなどを設定し、事業者ごとにオリジナルの物流基盤を構築するサービスです。
主なメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- オリジナル物流基盤にカスタマイズできる
カスタマイズではより細かな部分にも対応した物流を実現できます。たとえば顧客ごとのチラシや同梱物の入れ分け、商品加工、ささげ、オリジナル資材の使用、細やかなギフトラッピングなど幅広い業務のサービス利用が可能となります。 - 出荷件数・事業成長に合わせた規模拡張が可能
スタッフの確保がしやすく在庫保管スペースの拡張性も高いため、セールや繁忙期などの一時的な「出荷波動」や、今後事業成長に伴う規模の拡大・出荷件数の大幅増加にも柔軟に対応できます。 - 万全のサポート体制
専任担当者がつき、個別対応を行うため何か相談・トラブルなどが発生した場合はすぐに対応できます。
デメリット
- 余裕をもった導入期間が必要になる
- 出荷件数が少ない場合1件当たりの費用は比較的高くなる
など「パッケージタイプ」に比べると、時間も費用もかかります。
5料金プラン、何を基準に選ぶべき?
両プランのサービス内容と費用構造については理解できたが、結局どちらの料金プランを選べば良いのか、何を基準にして決めたら良いのか迷う…といった事業者様は、以下をご参考にしてみてください。
料金プラン、適合チェックリスト
1つでも項目が多く当てはまる方がそのプランと適合します。
- なるべく早くアウトソーシングしたい
- 出荷件数が少なくてもアウトソーシングしたい
- 費用をなるべく抑えたい
- 新規物流立ち上げで出荷件数の予測がつかない
料金プランが「カスタマイズタイプ」向きの通販事業者
- 要望に合わせた梱包・出荷を依頼したい
- 出荷件数が多く、今後も拡大したい
- ギフトラッピング・流通加工もしたい
- 購入者ひとりひとりに対してCRM対応をしたい
「パッケージタイプ」と「カスタマイズタイプ」比較表
以下は一般的な料金プラン比較表です。タイプによって得意不得意分野があるので、商品や販売戦略など自社ニーズに合致するか検討しましょう。
料金プラン | パッケージタイプ | カスタマイズタイプ |
---|---|---|
導入期間 | 数日単位~ | 数カ月単位~ |
出荷件数目安 | 少なくても可 | ある程度規模がないと費用「高」 |
費用 | 個数(サイズ)×日数 | 坪数、パレット数/月 |
カスタマイズ性 | 決まったルール・条件以外は基本的にNG | 自社の要望や商材に合わせて自由自在にオーダー可能 |
これらに合わせて、
- 月間出荷件数
- 現在の保管坪数
- 配送エリア
- 出荷が多いサイズ
- マーケティング手法
- 今後の成長性
など様々な要素や可能性を考慮しながら、各物流代行会社のプランやサポート面などを比較検討します。
物流アウトソーシング、はじめの一歩!
最適な提案を受けるためのRFPとは?
6事業成長を考えるなら、両プラン対応の物流代行会社が安心
現在出荷件数が少なくても、今後、成長したい・成長の可能性があるのであれば「パッケージタイプ」と「カスタマイズタイプ」の両方に対応できる物流代行会社にアウトソーシングし、状況に応じてプラン切替することも1つの選択肢です。
両方の料金プランに対応していることで、成長に応じてその時に適した提案内容を受けられるうえ、「別会社にリプレイスする必要がない」「物流システムをイチから再構築しなくてもよい」などの費用削減や時間短縮にも繋がります。
当社、スクロール360でも事業者様ごとのニーズに沿った物流基盤を構築する従来の「カスタマイズプラン」に加え、中小規模の通販事業者様向けに「ライトプラン(パッケージタイプ)」のサービスを提供しています。
7まとめ:費用構造を理解して最適な物流アウトソーシング先を見つけよう
物流アウトソーシングを実行する際には、全体的な費用がどのような内訳で構成されているのかを理解し、「パッケージタイプ」か「カスタマイズタイプ」かを選ぶようにしましょう。
事業の成長を感じた段階から信頼できる物流代行会社と関係性を作っておくことで、事業拡大や変化による影響を最小限に抑えられる可能性があります。物流アウトソーシングを検討している方、費用に関して疑問がある方は、通販物流のエキスパートであるスクロール360までお気軽にご相談ください。
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