物流拠点の分散とは、複数の拠点から荷物を出荷することです。配送コストの削減やお届け日数の短縮などのメリットがある一方で、業務負担や維持コストが増えるデメリットもあるため、分散を検討する際には注意が必要です。
本記事では、物流拠点を分散するメリット・デメリットに加え、拠点集約との比較について解説します。
目次
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1物流における拠点分散とは
物流における拠点分散とは、物流拠点を複数に分散して荷物を出荷することです。配送コストの削減やお届け日数の短縮が可能になることから、物流の効率化のために導入されています。
これに対し、物流拠点を一カ所に集めることを物流拠点の集約といいます。
物流拠点の分散と集約にはそれぞれメリット・デメリットがあり、場合によっては大きな損失をもたらす可能性があるため、まずはどちらが自社に適しているのか比較検討することが大切です。
2物流拠点を分散するメリット
物流拠点を分散するメリットは、以下の5つが挙げられます。
- 配送コストの削減
- お届け日数の短縮
- 災害時のリスク分散
- 拠点運営の効率化
- 物流の2024年問題に対応
配送コストの削減
物流拠点の分散によって、お届け先に最も近い拠点から出荷できるようになるため、配送コストの削減が期待できます。拠点からの距離が短縮されると、トラックの使用燃料やドライバーの(運転時間短縮による)人件費の削減に繋がるためです。
お届け日数の短縮
お届け先に近い拠点から配送できることで、お届け日数の短縮も可能となり、顧客満足度の向上にも効果的です。さらにこの配送リードタイムの短縮は、ドライバーの負担軽減にも繋がります。
災害時のリスク分散(BCP対策)
物流拠点をひとつに集約していると、災害発生などの非常時に全ての出荷が停止してしまうリスクがあります。出荷の停止は自社だけでなく消費者側にも損害をもたらすため、迅速な復旧が求められます。
これに対して、物流拠点を分散させることで、以下のリスク分散が可能になります。
- 地震や大雪、台風などの自然災害
- 感染症などのパンデミック
- システム障害
- テロや火災事故などの非常事態
これらのリスクに対応し、早期に復旧できる段取りを整えておくことをBCP対策といいますが、拠点の分散は、このBCP対策としても有効です。
拠点運営の効率化
物流拠点を分散すると一拠点あたりの運営規模や管理する人員、業務量や荷量が縮小されるため、運営の効率化にも繋がります。
これに対して大規模な集約型拠点の場合は、人員や運営規模が拡張すると、それぞれの管理業務が複雑になるため負担が大きくなります。このような負担を分散できる点も、拠点分散の魅力です。
物流の2024年問題に対応
2024年4月から働き方改革関連法が施行されることで、ドライバーの時間外労働の上限規制が設けられるようになり、従来の長距離運転に制限がかかります。
物流業界では人手不足が慢性化するとともに、この2024年問題への対応に迫られており、業務の効率化が急務となっている状態です。拠点の分散は、こうした問題を解決する糸口になる可能性があるため、注目を集めています。
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3物流拠点を分散するデメリット
物流拠点を分散するデメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 在庫管理業務の負担増加
- 新たな施設・設備導入に伴う費用負担
- リソースの増加
在庫管理業務の負担増加
物流拠点を分散すると在庫管理が複雑になります。
集客型拠点の場合は1つの拠点の在庫管理で済むため、在庫の全体像を把握しやすいですが、分散型拠点にすることで、拠点ごとの在庫管理をするだけでなく、全拠点の在庫全体を管理する必要があります。
例えば、拠点ごとに保管できる在庫数に限りがあるケースでは、欠品が発生しやすいため、拠点間の在庫転送が必要です。この在庫転送に伴う指示出しや管理業務が増えることも、負担が大きくなる原因です。
これらの負担を解消するためには、拠点間の在庫管理を自動化するシステムや設備の導入が望ましいですが、導入コストがかかります。
新たな施設・設備導入に伴う費用負担
新たな拠点の設置に伴い、施設や設備の導入コストが発生するため、集約型拠点から分散型拠点にする場合のコスト負担は大きいといえます。そのため、分散型拠点にした場合の費用対効果や費用回収までの期間を綿密にシミュレーションし、検討することが重要です。
リソースの増加
物流拠点が増えることで、必要最低限の人員を確保する必要があるため、新たな拠点の採用に伴うコストや業務が発生します。また、分散型拠点になると、例えば「どの拠点から出荷するのかを振り分ける」といった新たな業務も発生するため、リソースの増加も必要です。
4物流拠点を分散する前に考慮すべきポイント
物流拠点を分散する前には、以下の3つのポイントについて考慮しましょう。
- 契約面積の有効率
- 分散拠点の立地
- 費用対効果
契約面積の有効率
新たな拠点を契約する際は、荷量に対応できるか、運営コストはどれくらいかかるか、といった観点で最初に規模感を決める必要があります。この時、契約面積の有効率(拠点の面積に対して業務に使える面積の割合)には注意が必要です。
面積と契約料が同じ2つの拠点があり、有効率が80%と60%だった場合、有効率80%の方がコストパフォーマンスが高いといえます。
分散拠点の立地
分散拠点を設置するエリアによってコストが大きく変わるため、極力コストを抑えられるようにしたいですが、出荷の利便性が損なわれない立地であることも重要です。
【立地を見極めるポイント】
- 顧客分布量
- 高速道路や貨物駅へのアクセス
- 法的な問題の有無
- 他拠点との距離
- 人材確保に支障のない環境
費用対効果
分散型拠点にすることよって発生する施設・設備費や人件費をふまえて、全体の費用対効果を綿密にシミュレーションすることが重要です。その際は、集約型拠点の場合のコストシミュレーションも同時に行い、比較検討を行いましょう。
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5物流拠点の分散と集約の比較
物流拠点の分散と集約のメリット・デメリットを比較すると、以下のようになります。
拠点の分類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
分散型拠点 | ・配送コスト削減の可能性 ・お届け日数の短縮 ・災害時のリスク分散 ・拠点運営の効率化 ・物流2024年問題への対策 | ・在庫管理業務における負担増加 ・新たな施設、設備が必要 ・リソースの増加 |
集約型拠点 | ・施設、設備コストの削減 ・配送効率の向上 ・在庫管理の効率化 | ・災害時、非常時におけるリスク増加 ・(分散型と比較した) 配送リードタイムの柔軟性 |
それぞれのメリット・デメリットをもとに、自社にとって最善の方法を選びましょう。
6物流拠点の分散と集客を選ぶポイント
物流拠点の分散と集約を選ぶ際に押さえるべきポイントは、以下の3つが挙げられます。
- 物流拠点戦略の目的
- 物流の規模
- コスト・費用対効果
物流拠点戦略の目的
物流拠点を分散、あるいは集約する目的を明確にすることで、どちらを選べば良いか判断できるようになります。
例えば、配送リードタイムの短縮を目的とする場合は、お届け先との距離を短縮できる分散型を検討する必要がありますが、分散に伴うさまざまなコストが発生するため、目的だけではなく費用対効果もふまえて総合的に判断することが大切です。
物流の規模
例えば、消費者(お届け先)が首都圏周辺に集中し、且つ荷量が多いケースでは、集約型の大規模倉庫の方が効率の良い運用ができます。
これに対して、消費者(お届け先)が地方に分散し、且つ集約型拠点から各地への配送時間が課題となっているケースでは、分散型拠点の方が適しているといえます。
コスト・費用対効果
拠点戦略によって自社が抱える課題を解消できても、コストが多大にかかる場合は見直しが必要です。そのため、実践前に、分散型・集約型両方のコストシミュレーションを行い、総合的に判断することが大切です。
7まとめ:物流拠点の分散で作業効率を上げよう
物流拠点の分散とは、複数の拠点から荷物を出荷することです。配送コストの削減を期待できる点や、お届け日数の短縮などのメリットがあり、物流の効率化の手段として活用できることがわかりました。
ただし、拠点間の在庫管理など複雑な業務が増えたり、新たな設備投資や人員確保でコストが発生するなど、分散型拠点を実現するためには課題もたくさんあるため、自社物流で導入を検討する際には、綿密なコストシミュレーションが必要です。
自社で実現することが難しいと感じた場合は、物流のアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。
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