過去開催した「EC物流セミナー」のレポートをお届けします
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アフターコロナでEC注文が増えたにも関わらず、物流のキャパシティをオーバーして発送が遅れてしまったり、出荷キャパシティをオーバーしてレビューが低評価になってしまったりと、トラブルが増えてしまったことに悩むEC通販事業者も少なくありません。
その一方で、大量注文に対して日々のオペレーションを悠然とこなし、乗り切ったEC通販事業者もいます。その差は一体、どこにあったのでしょうか?
JADMA(日本通信販売協会)主催で5月に開催されたオンラインセミナーでその内容をテーマに、当社常務取締役の高山が「アフターコロナのEC通販物流」について、課題解決のヒントをお話ししました。
目次
物流業界の2024年問題で、
EC通販事業者がすべき3つの対策とは?
1物流セミナー (1) : 消費行動の変化
新型コロナウィルスの影響でEC市場に大きな変化が訪れています。まず初めに「消費行動の変化」です。緊急事態宣言の後、大量に出荷が増大しました。
アフターコロナで出荷増となった商品の傾向
(A分類)は、リアル店舗が閉まってしまい、店舗で買えないものをECで買うというような商品。化粧品・アパレルインナー・雑貨といったものです。
(B分類)は、コロナ対策としての健康管理・免疫力を強化する商品。血圧計体温計・マスク・マスク製造キット・ローヤルゼリー・青汁といったものです。
(C分類)は、コロナ影響で生活様式が変わったことに伴う商品。「自宅の〇〇化」がキーワードですが、家でストレッチポール・筋力増強マシーンを買って「自宅のジム化」をする、高級のワインを買って「自宅のワインバル化」をする、などに関するものです。
(D分類)は、 C分類と関係しますが、家にいる時間が増えたため環境を良くするための商品。防音マット・防音パーテーション・壁紙・DIY用品・ガーデニンググッズといったものです。
このように、緊急事態宣言発令から「EC物流」に劇的な変化が訪れました。
劇的に出荷増のショップが現れ、前年対比150%の中には1,000%と10倍の出荷量になったEC通販会社もあります。
物流を制するものが、アフターコロナを制する
今後の傾向としては下記1~3のとおりとなります。
- 新型コロナの影響で、DX化の加速は決定的になった!
- 今後のEC受注の拡大に対応した物流基盤の構築が急務!
- 物流基盤強化のキーワードは3つ!
- 感染症対策の徹底ができる物流センター
- BCP対策としての他拠点化
- 物量の波動対応ができるマテハン機器
物流センターの感染症対策7つの事例
当社スクロール360の物流センターでは、
合言葉「物流を止めるな」をキーワードに、全部で7つの感染症対策を取っています。
今のところ、1人の感染も出したことがない、という状況です。
- 身体に異常を感じる者は出社禁止
毎日計熱を義務化:当日欠勤者の理由が発熱(or家族の発熱)の場合、
管理部に情報集約 - 他府県からの出張者の入場禁止
- 社員、外部入場者は入場時にアルコール消毒及び全員マスク着用を義務付け
- 休憩時間(午前・午後各1回)及び昼食時にアルコール消毒
- 昼食は2班体制
座る位置は作業棟で分ける/両横と対面は空けて座る/入れ替え時に換気 - スタッフの作業履歴をシステム管理
例:B棟1F梱包 ⇒ C棟4Fピッキング ⇒ F棟1F梱包
感染者が出た場合に濃厚接触者の特定が可能 - 対策方針書により「初動」「基本行動フロー」を策定
当社は札幌・茨城県のつくばみらい・静岡県の浜松市界隈・関西と4拠点持っており「2箇所に分散して出荷して欲しい」というようなご要望にもお応えします。
「お届け先住所から近い場所からお送りする」「災害対策として、片方がダメでも片方でカバーする」というような運用体制に変えていく通販会社が多い傾向です。
波動に対応するためのマテハン設備とは?
また物流の波動にマテハン設備で対応。EC物流では誤送も発生しますので、当社の物流センターは梱包風景を全て動画で撮影し、トラブル時などはそのお客様の梱包作業をした時間まで遡り、動画を確認しています。
当社の倉庫管理システム(WMS)では、本日出荷しなければいけない件数に対して、何件まで完了しているのかを画面で一度に確認することもできます。本日の出荷が危ないことが分かると、そちらにスタッフを配置して必ず当日中に出荷する、という運用をしています。
お客様個別に印刷内容を分けることができる “ワントゥワンマーケティング” を可能にする「オンデマンドプリンター」、
一気に32人分のピッキングをして、バーコードを読むと、その商品を入れる蓋が開いて間違いなく仕分けができる「ゲートアソートシステム(GAS)」、ポスト投函ができる厚さの包装を非常に早い速度でできる「ピロー包装機」なども導入しています。
また、大量に商品が入ってきた時はパレット単位で詰めていきますので、通常ですとフォークリフトが入る入り口を設ける必要がありますが、こちらの場合はフォークリフトが入るところだけを開けることができる可動式になっています。
これによって保管効率は通常のパレットの倍となります。そして配送会社への荷渡しは、方面別に仕分けてお渡しすることで、各配送会社の負担を減らし、そのぶんのコストを下げるという取り組みもしています。
2物流セミナー (2) : 配送方法の変化
続いて「配送方法の変化」について触れたいと思います。
感染症の予防のため「配送の非接触化」というような流れがあります。
先日、お客様を集めた「グループインタビュー」を実施したところ7人中6人の方が、ドライバーさんと対面してハンコを押すのは嫌なので、郵便ポストに入れて欲しい、とのことでした。そうしたニーズに応える「配送の非接触化」の具体例は以下となります。
「置き配」について、Amazonは注文するとデフォルトが置き配になっています。玄関先に荷物置いて、撮った写真を注文者に送るという仕組みです。
次に「ポスト投函」ですが、メルカリも、ゆうパケットプラスというような商品を出してポスト投函を推奨しています。最後に「ドローンを使った配送サービス」、こちらはセイノーホールディングス株式会社の取り組みがスタートしています。
物流業界の2024年問題で、
EC通販事業者がすべき3つの対策とは?
3物流セミナー (3) : 通販ECの変化
アフターコロナではDXの加速が確定になり、全ての会社がECを強化してきますので、商品の性能や品質だけで差別化するのが困難になっていくでしょう。付帯サービスやコミュニケーション、これが商品と共にブランドの競争力を強化する重要な要素となっていきます。
社員2.6倍で売上8倍に対応、レビューも高評価の事例
ご参考までに、スクロールグループの「AXES」の成功事例をご紹介していきます。
AXESは、ブランドのバッグを並行輸入して販売をする楽天・ヤフー・アマゾン等で90億の売り上げを誇る会社になります。
2012年にスクロールグループに入り、売上が8倍になっていますが、社員は2.6倍と少ない中で、楽天のレビューみますと「4.77 高評価」。少ない人数でも非常に手の込んだサービスをしていることがわかります。
なぜこのようなことができるかというと、実はAXESの物流からコンタクトセンターまでは、全てスクロール360が行なっています。商品が物流センターに届きますと、当社で撮影・採寸・原稿もアップし、各ECサイトに商品アップロードもします。
注文はコンタクトセンターのスタッフが全部取り出し、メールの対応もして、その上で出荷センターに指示を出す、というように、全てのアウトソーシングが行われています。
仕入れはAXES、それ以外は、全てスクロール360が行っているような状況です。
上の事例のように、アフターコロナのEC成功の秘訣としては、顧客体験ストーリーの構築とマーチャンダイジングに集中する。そのために「BPOをフル活用する」ことが重要になります。
これからのEC事業者が意識すべきキーワードは「ナラティブ」
こうした顧客体験ストーリーの構築に必要なキーワードは「ナラティブ」。
ブランドと顧客で一つのストーリーを紡ぎ出すことが大切です。
商品はあくまで「手段」であり、店舗が提供するのは「商品の購入」だけではなく「顧客の購買体験」顧客の体験をサポートする、ということがいえると思います。
具体的に、店舗側はどのような購買体験をサポートできるのでしょうか?
ナラティブ構築、具体的事例の部分からセミナー動画を再生する
4物流セミナー (まとめ) : アフターコロナでDX加速は決定的
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アフターコロナでDX化の加速は決定的です。その中でEC物流基盤の強化が非常に重要であることが分かりました。AXESのように、BPOをフル活用して人的リソースを顧客体験演出する「ナラティブの構築」に向けることが大切です。
BPO活用方法については、当社高山が書いた書籍「EC通販で勝つBPO活用術(ダイヤモンド社)」でも上手な活用の仕方や成功事例がたくさん載っていますので、ぜひご覧になってみてください。
物流業界の2024年問題で、
EC通販事業者がすべき3つの対策とは?
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