EC通販事業において、顧客分析はマーケティング戦略の立案や商品・サービスの改善に欠かせない作業です。顧客分析によって、顧客一人ひとりにアプローチできるため、リピート率の改善にもつながり、売上の向上にも大きく貢献します。
本記事では、ECサイトにおける顧客分析の概要や手順、フレームワークの種類を紹介します。顧客分析で成果を高めるためのポイントも紹介していますので、ぜひご参考ください。
目次
ECの売上アップに繋がる「多店舗展開」、
メリットや成功の秘訣を具体例と共に解説!
1ECサイトにおける顧客分析とは
顧客分析は
- 顧客満足度向上
- 商品・サービスの改善
を目的に、自社の顧客の特徴を分析して理解を深めるマーケティング手法です。
フレームワークを活用しながら仮説を立て、改善策を実施・検証する流れで行うもので、ECサイトでは「年齢」「性別」「購入商品」などのデータをもとに顧客を分類し、一人ひとり最適なアプローチ方法を考えて実施します。
顧客分析が重要な理由
たとえばメールマガジンでは、性別や年齢に応じ顧客ニーズのある商品をおすすめしたほうが売上につながる可能性があります。そのためには、顧客情報を分析し、それぞれの客層に合った商品抽出が欠かせません。
顧客ニーズが多様化している現在では、興味や購入商品、閲覧した商品紹介ページなどあらゆる要素から分析し、顧客一人ひとりに最適な商品・サービスを提供することが、EC通販事業者にとって重要になります。
2ECサイトの顧客分析で活用されるフレームワーク
EC 通販事業者が顧客分析を行う際は、以下のようなフレームワークを用います。
- CPM分析
- RFM分析
- デシル分析
- セグメンテーション分析
- CTB分析
CPM分析
CPM分析は、以下の4つの指標をもとに分析するフレームワークです。
- 購入頻度
- 購入総額
- 在籍期間(初回購入日から直近の購入日までの日数)
- 離脱期間(直近の購入日から経過した日数)
これに基づき、客層を以下10個のセグメントに分類します。
種類 | 概要 |
---|---|
初回現役客 | 期間内に自社サイトで初めて購入した顧客 |
よちよち現役客 | 期間内に自社サイトで2回以上購入した顧客 |
コツコツ現役客 | 期間内に自社サイトでリピート購入をしている顧客 |
流行現役客 | 短期間で一定金額以上の購入がある顧客 |
優良現役客 | 自社サイトで長期間、一定金額以上の購入をし続けている顧客 |
初回離脱客 | 以前自社サイトで1回だけ購入したが、現在はサイトを利用していない顧客 |
よちよち離脱客 | 以前自社サイトで2回以上購入したが、現在はサイトを利用していない顧客 |
コツコツ離脱客 | 自社サイトでリピート購入をしていたが、現在はサイトを利用していない顧客 |
流行離脱客 | 短期間で一定金額以上の購入をしていたが、現在はサイトを利用していない顧客 |
優良離脱客 | 自社サイトで長期間、一定金額以上の購入をし続けていたが、現在はサイトを利用していない顧客 |
ぞれぞれの客層に合った商品紹介やクーポン配信を行うなど適切なアプローチをすることで、更なるリピーター獲得・優良顧客への育成が可能になります。
RFM分析
RFM分析は、以下の3つの指標をスコアリングしてグループ分けする分析手法です。
- 直近の購買日(Recency)
- 購買頻度(Frequency)
- 購買金額(Monetary)
たとえば、以下のようにスコアを付けます。
スコア | 直近の購買日 | 購買頻度 | 購買金額 |
---|---|---|---|
3点 | 1ヶ月以内 | 3回以上 | 10,000円以上 |
2点 | 半年以内 | 2回以上 | 5,000円以上 |
1点 | 半年以上 | 1回以上 | 1,000円以上 |
スコアを決めたら、自社で基準値を設けて以下の4つの層に分け、離脱客以外のアプローチ対策を考えます。
- 優良層
- 見込み層
- 新規層
- 離脱層
CPM分析と比べると、購入期間を設けない「短期的な視点での分析」が特徴です。そのため、測定時期にたまたま購入していなかった顧客も離脱層に分類されてしまうため、優良顧客であってもアプローチはできません。
デシル分析
デシル分析は、購買履歴より全顧客の購入金額を高い順に10等分し、デシル1からデシル10までランク付けする方法です。ランクごとの購入比率や売上高構成比を算出し、売上貢献度の高いデシルに対してアプローチを行います。
他の分析手法と比べると売上貢献度順にアプローチするため、効率的に売上を獲得できるうえ、扱う指標の数が少なく簡単に分析することができます。
ただし、売上貢献度の上位がリピーターかどうか…のような細かい顧客分析を行うことはできません。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析は、顧客を属性やニーズなどで細かく分類する手法です。以下のように業界や職種、顧客分析の目的などによって用いる指標が異なります。
用いられる指標 | 具体例 |
---|---|
地理的変数(ジオグラフィック変数) | ・国や地域 ・人口や人口密度 ・気候 ・文化 ・地域別の経済情勢 |
人口動態変数(デモグラフィック変数) | ・性別 ・年齢 ・職業 ・年収 ・ライフイベント |
心理的変数(サイコグラフィック変数) | ・ライフスタイル ・興味 ・関心 ・性格 |
行動変数 | ・購入回数 ・購入金額 ・購入商品 ・閲覧したページ ・サイトの滞在時間 |
CPM分析やRFM分析と比べると、数値ではない指標の活用が特徴ですが、このセグメンテーション分析により、多様化した顧客ニーズに合ったアプローチができます。
ただし、細分化したセグメントと自社商品のターゲット層が乖離している場合は、マーケティング戦略が成功しない場合があります。
CTB分析
CTB分析は、以下の3つの指標を使って分析する方法です。
CTB分析の指標 | 具体例 |
---|---|
カテゴリ(Category) | ・家電 ・衣料品 ・スポーツ用品 ・玩具 |
テイスト(Taste) | ・色 ・形状 ・サイズ |
ブランド(Brand) | ・ブランド ・キャラクター ・メーカー |
上記の中から顧客の属性を分類し、それぞれの顧客に応じてマーケティング戦略を立案・実行します。
ほかのフレームワークが既存商材を効率的に売るのに対し、CTB分析は将来の購買予測のために活用します。それぞれの客層がよく購入する商品・購入しない商品を知ることができ、新商品やサービス開発時の参考になるでしょう。
ECの売上アップに繋がる「多店舗展開」、
メリットや成功の秘訣を具体例と共に解説!
3顧客分析の手順
顧客分析は以下の手順で行います。
- 目的を明確にする
- 仮説を立てる
- データを分析する
- 改善施策を実行し、検証する
1. 目的を明確にする
はじめに、自社の課題を洗い出し「リピーター率の増加」「サイトアクセス数の増加」など顧客分析を行う目的を明確にします。
目的が不明瞭なまま顧客分析を行った場合、必要なデータや施策がわからず、効果を得ることができません。
2. 仮説を立てる
目的に沿って、できるだけ多くの仮説を洗い出します。
たとえば「商品紹介ページと実物のイメージが違ったから、次の購入をやめた」「価格面での購入ハードルが高いから2回目の購入をやめた」のように、広い視野で仮説を立てましょう。
一通り仮説を洗い出した後は、検証する仮説の優先順位を決めます。「売上への効果」や「改善のしやすさ」などの項目を仮説ごとにスコアリングして、合計得点の高い順に実行します。
3. データを分析する
仮説の裏付けを行うために、必要なデータを収集しましょう。
たとえば「商品紹介ページと実物のイメージが違ったから、次の購入をやめた」という仮説の場合、ECサイトのレビューを見てこの仮説と同じレビュー数を把握します。
また「価格面での購入ハードルが高いから2回目の購入をやめた」という仮説を立証する場合は、各商品の購入頻度や価格を照らし合わせます。
このように目的や仮説に合わせて必要なデータを収集し、仮説が正しいことを立証してから改善策を考えましょう。
4. 改善施策を実行し、検証する
仮説をもとに改善施策を考えて実行し、過去のデータと比較して「実際に効果があったか」「どのくらい改善することができたか」を検証します。
実際に効果があった場合は、次の課題の解決に向けて取り組みましょう。失敗した場合は、その原因を考え、新しく改善施策を実行・検証します。
検証結果によって新たな課題が出てくるため、PDCAサイクルを回しながら仮説・検証を繰り返していくことで、ECサイトの売上が向上しやすくなります。
4ECサイトで適切に顧客分析するためのポイント
ECサイトで適切に顧客分析するためのポイントとして、以下の4つがあります。
- 顧客ニーズを理解する
- ターゲットとなる顧客を定義する
- 市場規模や成長性を把握する
- CRMツールを導入する
顧客ニーズを理解する
顧客満足度を高めるには、商品が購入された理由・されなかった理由を洗い出し、顧客視点から物事を考え、顧客ニーズを確認することが大切です。
たとえば、自社で販売しているお菓子が売れた場合、以下のように理由を考えます。
- お手頃価格だからか
- パッケージやお菓子のデザインがきれいだからか
- 味が美味しいからか
- 原材料が健康によいからか
- 自社ブランドに共感できるからか
このようにさまざまな視点から顧客分析を行い、データで裏付けすることで、顧客ニーズへの理解を深められます。
ターゲットとなる顧客を定義する
精度の高い分析結果を得ることができるよう、必ず顧客の範囲を定義しましょう。
性別や年齢、地域別などの個人情報での分類や、優良顧客に絞った分析など、目的に合わせて顧客の範囲を明確にします。
顧客の定義づけによって、マーケティング戦略や新商品開発などの方向性が大きく変わることがあるため、慎重に決めましょう。
また、実際に需要があるかどうかを判断するために、グループインタビューを実施することも1つの手段です。
市場規模や成長性を把握する
自社が参入している市場の規模や将来性を予測して、顧客分析を行なうことも重要です。顧客分析では過去のデータを用いて施策を考えますが、市場規模の拡大も予測できなければ将来の売上には結びつきません。
たとえば、若年層を対象にした商品を売る場合、少子高齢化によって徐々に市場が衰退していく可能性があります。そのため、異なるターゲットに需要があるかを分析し、売り込んでいくことも考える必要があります。
CRMツールを導入する
顧客の個人情報や購入に関する情報など膨大なデータを扱う必要があるため、CRMツールを活用して効率的に顧客分析を行いましょう。
CRMツールは、一元化された顧客情報をもとに顧客の将来の行動を予測でき、顧客一人ひとりに最適なアプローチを提案してくれるマーケティング支援ツールのことです。
顧客のタイプごとに最適なメールマガジンの送信やクーポンの配信ができるため、顧客満足度や購買意欲を向上させるなどリピーター獲得につながる可能性があります。
顧客分析から施策の実行までの作業効率化にも効果的なため、顧客分析に時間を割けることができずに悩んでいる場合にCRMツールはおすすめです。
ECの売上アップに繋がる「多店舗展開」、
メリットや成功の秘訣を具体例と共に解説!
5まとめ:ECサイトの顧客分析をして売上を拡大しよう
ECサイトで個人情報や行動データなどを収集することで、さまざまな視点からの顧客分析が可能になり、マーケティング戦略や商品・サービスの新開発にも活用することができることがわかりました。
そのためにも顧客分析の目的に沿って考案した仮説を検証し、課題解決や問題点の改善に取り組んでいきましょう。
ECの売上アップに繋がる「多店舗展開」、
メリットや成功の秘訣を具体例と共に解説!
サービスはこちら