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TMS(輸配送管理システム)とは?WMSとの違いやメリットを解説

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TMS(輸配送管理システム)とは?メリット・デメリット

物流におけるTMS(輸配送管理システム)とは、商品の出荷から消費者の手元に届くまでの配送業務を標準化し、効率的な配送を実現するシステムです。

従来、配送の割り振りを決める配車業務は、経験豊富な担当者の経験と勘に頼ることが一般的でした。しかし高齢化やノウハウを継承する若手が不足する中、業務の進め方を見直す必要があります。

本記事では、TMSの導入を検討している方に向けて、WMSとの違いやメリット・デメリット、自社に最適なシステムを選ぶポイントを解説します。

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TMS(輸配送管理システム)とは

配達完了(イメージ)

TMSとは「Transport Management System」の略で、商品が出荷された後、消費者に届くまでの情報を一元的に管理し、各プロセスを最適化するシステムです。

適切な配車を行うためには、出荷から配達完了まで以下の情報の把握が必要です。

  • 各トラックの現在地
  • 現在トラックが積んでいる荷物の量
  • 配車の段階でトラックに積める荷物のサイズ・重さ・種類(温度帯など)
  • トラックが使用した燃料の量

従来は、経験豊富な担当者の勘に頼り、配車計画を行うことが一般的でした。しかし、属人化を招くことに加え、荷台のスペースを十分に活用できず、より効率的な配車を見逃す可能性があります。

TMSを導入すると、配車や荷台スペースの管理などを最適化し、以下のような業務を効率化することが可能です。

  • 配車・配送計画
  • 進捗管理
  • 積付
  • 運賃計算
  • 請求書発行

WMS(倉庫管理システム)との違い

WMS(Warehouse Management System)は倉庫管理システムと呼ばれ、入荷~出荷までの業務に特化しています。 WMSの具体的な機能は以下の通りです。

  • 入出庫管理
  • 在庫管理
  • 棚卸管理

このように、WMSは出荷までの範囲をカバーし、出荷後はTMSで管理するため、この2つのシステムを連動させることで一貫して管理・効率化を図ることができます。

TMSが求められる理由

TMS 求められる理由(イメージ)

TMSが求められる背景には、恒常的な物流業界の人材不足があります。具体的にはトラックドライバーの高齢化や成り手不足、2024年問題などです。

昨今ドライバーだけでなく配車業務ができる経験豊富な担当者も不足しているため、誰でも配車業務が行えるような標準化が求められています。

尚、2024年問題とは「働き方改革関連法」により、労働時間が制限されるため、トラックドライバーが2024年に大幅に不足すると懸念されている問題のことです。この対策のひとつとして、TMS導入が考えられています。

TMSの機能

TMSには、多様な機能が搭載されています。輸配送業務の中心を担う配車管理、配送進捗管理に関する機能を中心に紹介します。

TMS TMS 機能(イメージ)
  • 配車・配送計画管理機能
  • 配送進捗管理機能
  • 経理管理機能
  • 積付管理機能
  • バース予約機能

配車・配送計画管理機能

従来は、以下の情報をもとに頭の中で考え、最適な配車・配送計画を導き出していました。

  • 稼働できる車両とドライバー数
  • 配送先情報(届ける場所、配送の時間帯、納品方法など)
  • 荷物情報(サイズ・重量・温度帯など)

ここでTMSを用いると、複雑な計画立案作業を人力で行う必要がなくなり、ミスやコストの削減、稼動の効率化を実現できます。さらに、それぞれの車両の稼動率をもとに、車両の燃料費やドライバーの作業量をデータ化もできるため、ドライバー全員の負担が均一になるようなルートを自動計算することも可能です。

配送進捗管理機能

【トラック・ドライバーの業務状況のイメージ】

トラック・ドライバー業務状況(イメージ)

TMSでは、GPSやドライブレコーダーなどを使って、トラックやドライバーの状況をリアルタイムで追跡できます。「出発」「配達」「休憩」「集荷」などの状況がリアルタイムでわかるため、効率的な配車ができるだけでなく配送先からの問い合わせにも的確な回答が可能です。

経理管理機能

TMSでは、トラックが1日に消費した燃料費などの経費管理や、運賃などの支払請求・入金管理も可能です。経理業務もTMSを中心に行うことによって、より一元的な情報管理が実現できます。

積付管理機能

トラックに積める荷物の量は、積み方の工夫によって最大化することが可能です。
TMSの中には、最も効率的にスペースを活用できる積み方を自動的に計算できる機能を搭載しているものもあります。

バース予約機能

荷物の積み下ろしのためにトラックが停車する場所を「バース」といいます。
TMSによっては、バースの空き状況を確認し、空き時間に合わせて事前予約することも可能です。バースが事前予約できると、荷待ちの時間削減に繋がります。

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TMSのメリット

TMSは、作業効率化のほか、人件費や配送コストの削減を実現できます。具体的には、以下のようなメリットにより、アナログでの配送管理に比べて業務を効率化することが可能です。

TMSのメリット(イメージ)
  • 積載率が向上する
  • 物流コストを削減できる
  • 配車業務の標準化を実現する
  • 配送状況が可視化される

積載率が向上する

TMSは、納品先の特徴や時間、物量などの過去の実績を考慮した効率的な配車を組むことが可能なため、結果的にトラックの積載率が向上します。積載率が向上すると無駄なく効率的にトラックを稼働できるため、燃料費やCO2排出量の削減も可能です。

物流コストを削減できる

人件費や燃料費などの配送コストデータをもとに、トラックやドライバーの配置を最適化できます。物流にかかるコストの大部分が、配送時にかかる燃料費や人件費です。極端に運搬量が多い、または少ないトラックは、積み下ろし時間の増加や利益率の低い運転になるため、配送コストが増える原因のひとつです。

また、同じ作業をする担当者の業務量、業務時間が均一化されることで、ひとりあたりの残業時間が減り、人件費の削減や人材定着率の向上も期待できるでしょう。

配車業務の標準化を実現する

TMSを導入すると、最適な配車計画が自動的に立案されるため、作業が標準化されます。

加えて、TMSを使い続けると渋滞や遅延が発生しやすいルートの情報も蓄積されるため、ルート変更や出発時間の判断も容易です。これにより担当者の能力や勘に頼った状況を脱し、配車の精度を高めることが可能となります。

配送状況が可視化される

TMSでは、従来よりも貨物とトラックドライバーの配送状況が可視化されるため、スムーズな問い合わせ対応が可能です。

従来は問い合わせを受けた後、担当がドライバーに電話確認し、状況を聞いてからお客様に伝える方法が一般的でした。配送状況が可視化できるようになると、ドライバーに電話確認しなくても状況がリアルタイムに把握できるため、問い合わせ対応の品質や顧客満足度の向上に繋がります。

TMSのデメリット

TMSの導入にあたって注意すべきデメリットもあります。導入の判断にも関わるため、以下の2点を確認しましょう。

TMSのデメリット(イメージ)
  • 導入や運用のコストが発生する
  • 説明と社内浸透に時間がかかる

導入や運用のコストが発生する

TMSは導入時だけでなく運用後も利用料などのコストが発生します。IT設備投資(タブレット、スマートフォンなどのIT端末)が必要になる場合もあるでしょう。システム費用だけが膨らむ結果にならないように、ランニングコストに見合った効果が出るかどうかを試算することが重要です。

説明と社内研修に時間がかかる

TMSを導入すると従来の業務の進め方が大きく変わり、企業の規模感によっては、実際の業務でスムーズに使いこなせるようになるまでには一定の期間が必要です。

また、物流に直接的に関わる部署だけでなく、経理や総務など、間接的な関わりでもシステム変更によって大きな影響を受ける部署も存在します。大きな混乱を避けるためには、テストや移行期間を設けることや、トラブル時の対応方法などを想定して事前に細かく決めておくとよいでしょう。

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TMSを選ぶポイント

TMSは配送業務の各プロセスの効率化に繋がりますが、すべての機能を網羅的に標準搭載したTMSはありません。標準機能にオプションで必要な機能を追加していく方式が一般的です。
以下3つのポイントを押さえて絞り込み、自社に最適なシステムを選ぶとよいでしょう。

TMS ポイント(イメージ)
  • 自社の課題を解決するTMSを選ぶ
  • 既存システムとの連携を考慮する
  • 拡張性を考慮する

自社の課題を解決するTMSを選ぶ

TMSは、配送計画、進捗管理、運輸管理、バース予約など、物流の機能に応じてシステムが分かれています。導入の際は、自社の物流課題を解決するものを選びましょう。

たとえば、配車の無駄が多い場合は「配車・配送計画システム」、配送状況の問い合わせに速やかに対応したい場合は「車両管理システム」など、課題を解決できる機能から絞り込むことで、自社に最適なTMSを選ぶことができます。

すべての課題をカバーしようとすると高額な投資が必要になるため、優先順位の高い機能から導入しましょう。

既存システムとの連携を考慮する

TMSの中には、ほかの物流システムと連携できるものもあります。たとえば、前述のとおり倉庫や配送センターでの業務効率化に役立つWMS(倉庫管理システム)などが当てはまります。すでに導入している物流システムがある場合は、既存システムと連携が可能なTMSを選ぶと効率的です。

拡張性を考慮する

TMSの導入時は、「現時点でボトルネックとなっている課題を解決すること」だけでなく、将来の拡張性も視野に入れて選びましょう。運用開始後に機能追加できるTMSだと、導入当初は使う見込みがない機能でも、事業成長に伴い必要な時期が来る可能性もあるため有効的です。

まとめ:TMSを活用して物流を効率化しよう

TMS(輸配送管理システム)は、商品の出荷後、消費者の手元に届くまでの配送業務を標準化し、効率的な配送を実現するシステムで、配車業務を改善するだけでなく、積載率の向上やコスト削減にも繋がることがわかりました。

輸配送に関わる人材不足が深刻化する昨今、業務の効率化は緊要な課題です。
TMSの導入には高額な投資が必要ですが、変化に対応し、成長し続けるには導入も選択肢のひとつです。まずは社内で十分な検討を実施しましょう。

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