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物流業界の課題解決へ導くAI活用事例やメリット・デメリットを解説

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物流業界のAI活用事例

物流業界では近年、AIを搭載したロボットの活用や、AIによる物流量の予測が進んでいます。大手配送業者では、実際にAIロボットを導入して生産性が向上したという結果も出ており、自社の物流工程にAIを導入したいとお考えの企業も少なくありません。

本記事では、物流業界が抱える課題を解決に導くためのAI活用事例と、導入のメリット・デメリットを解説します。

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物流業界における課題

物流業界では近年、EC取引の増加によって商品の配送量が急速に増えています。一方で、高齢化ドライバーの退職と、新規人材を獲得できないことによる人材不足が課題となっています。
もう少し具体的に、下記の3つに分けて解説します。

物流業務(イメージ)
  • 過酷な労働環境
  • EC市場の規模拡大に伴う業務増加
  • 物流現場の人材不足

過酷な労働環境

重い荷物を運搬する荷降ろしや荷揚げ作業を行う物流現場は、とても過酷な環境です。
荷崩れが起きた場合は、ケガをしたり、荷物を破損させてしまうリスクがあるため、現場で作業を行うスタッフにとって精神的な負荷が大きくなります。

また、物流業界では長時間労働も課題の1つです。国土交通省が2020年に公開した資料「物流を取り巻く動向と物流施策の現状について」では、トラックドライバーの年間労働時間は、全産業平均と比較して約2割長いと報告されました。
(参考:国土交通省/物流を取り巻く現状について

このような課題を受け、ドライバーの労働環境改善に向けた取り組みが進んでおり、2024年からはドライバーの年間時間外労働が960時間に制限されます。一方、ドライバーの働き方改革が進むことで、配送量が制限され、物流業界全体の売上が減ることも予想されているため、限られた労働時間で多くの成果を上げるための業務効率化が注目されています。

EC市場の規模拡大に伴う業務増加

EC市場の規模は拡大しており、2020年のEC取引額は約12兆円となっています。2013年のEC取引額が約6兆円であったことから、10年足らずで2倍の規模に拡大したことが分かります。
(参考:経済産業省/電子商取引に関する市場調査の結果

EC市場の拡大に伴い、配送量も増加するため、物流現場の負担はさらに大きくなっています。配送を行うスタッフは限られた時間で配送を終わらせなければいけないため、作業スピードを重視しすぎるがあまり、確認漏れや入力ミスが増えてしまうことも課題です。そのため、物流現場ではヒューマンエラーを回避して迅速に業務を行う工夫が必要となります。

物流現場の人材不足

物流現場では、少子高齢化による人材不足が深刻化しています。高齢層のトラックドライバーが退職していく一方で、少子化により新しい人材を確保することが難しく、今後はさらに労働力が不足することが予想されます。労働力を補うため、人に代わって業務を行うことができるAIロボットやAI技術を搭載した、管理システムの活用が注目されています。

物流課題の解決策として注目されるAIの活用

国土交通省は、人手不足などの物流課題に対する解決策として物流DX、すなわちデジタル化を通じた物流業界の変革を推進しています。

その中の具体的な施策の1つに「AIを活用したオペレーションの効率化」が挙げられており、人工知能が物流課題の解決策として注目されています。

たとえば、AIロボットに倉庫内での運搬作業をさせると同時に、データ管理もAIで自動化することによって、作業プロセスを標準化するといった取り組みです。また、最適な配送ルートを作成するAI技術を活用し、オペレーションを改善することも目指しています。

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物流業界におけるAI活用事例

物流業界において、実際にAIを活用した事例を3つ紹介します。

物流業界のAI活用事例(イメージ)
  • 貨物量予測システム
  • 荷物運搬ロボット
  • 在庫管理システム

貨物量予測システム

ヤマト運輸は、配送現場の生産性向上に向けて、AIによる貨物量予測システムを導入しました。貨物量予測システムとは、過去の配送センターで取り扱った荷物量のデータをもとに、AIが配送センターごとの貨物量を予測するシステムです。

ヤマトグループが保管する過去4年分の集荷量データ・配送量データ・配送先データをアルゴリズムが解析することで、全国に約6,500カ所ある配送センターにいつ、どのくらいの荷物が届くかを予測できるようになりました。

AIによる貨物量予測の精度が向上し、正確に貨物量を把握できるようになると、現場スタッフの勤務シフトを計画しやすくなります。また、通常よりも配送量が増加することがあらかじめ予測できる場合は、事前にドライバーを手配しておくという対応も可能です。

荷物運搬ロボット

日本運輸株式会社では、倉庫内で荷物を運搬するAMR(自律走行搬送ロボット)を導入しました。AMRとは、目的地まで自動走行して荷物を運搬することができるロボットです。ロボットに搭載されたAIが最適な経路を判断するため、あらかじめ走行経路を設定する必要はなく、現場のスタッフと協働で物流業務を行うことができます。

日本運輸が行った実証実験では、ピッキング作業の効率化や生産性向上、スタッフの負荷軽減などの効果を確認でき、東京都内の品川支店物流センターでの本格導入に踏み切りました。今後、日本運輸は他の物流拠点にも順次AMRを導入していく予定です。

在庫管理システム

物流関連システムを開発しているGROUNDは、2021年8月に在庫管理システム「GWES」の提供を開始しました。「GWES」はAIを活用することで在庫管理を最適化できるシステムで、たとえば、作業台車(フォークリフト・ロボット・カゴ車など)の積載可能量を踏まえて、作業効率の良い在庫配置をAIが提案します。

また、倉庫の作業状況をリアルタイムにモニタリングし、作業遅延が発生している場合は、リカバリー対策を提案することも可能です。現状の作業進捗を踏まえて、AIが翌日の作業量のシミュレーションを出すこともできます。

物流AIを導入するメリット

上記で紹介したAIシステムを、物流業界で活用することによるメリットを解説します。

物流AIの導入メリット(イメージ)
  • より正確な物流予測ができる
  • 人員配置を最適化できる
  • 在庫数量を適正化できる
  • 検品作業を効率化できる
  • AIロボットで労働力不足が解消できる
  • 革新的なソリューションが生まれる

より正確な物流予測ができる

AI活用は物流予測が正確になるというメリットがあります。
物流業界の企業に蓄積している膨大な集荷量データ・配送量データをAIが分析することで、これまでよりもさらに正確な物流量の予測ができるようになります。

人では解析不可能、あるいは解析に時間がかかるビッグデータであっても、AIが機械学習することで価値ある情報となるのです。また、今後さらに集荷量データ・配送量データが蓄積されていくことで、予測精度の向上も期待できます。

人員配置を最適化できる

AI活用は人材配置を最適化できるというメリットがあります。
AIが正確な物流予測を算出することが可能になることで、必要となる労働力が把握できるため、作業スタッフの勤務シフトを効率的に組むことが可能になります。

在庫数量を適正化できる

AI活用は在庫数量を適正化できるというメリットがあります。
AIが精度の高い物流予測を行うことで、販売数量から逆算して必要な在庫数量を導くことが可能になります。

これまで在庫数量の予測は、人が分析できる範囲のデータで判断するしかありませんでしたが、ビッグデータをAIが解析することで、より正確な在庫数量を算出することができるようになります。その結果、余剰在庫・滞留在庫を抱えるリスクが軽減されます。

検品作業を効率化できる

AI活用は検品作業を効率化できるというメリットがあります。
具体的には、AIを搭載した画像認識システムが不良品を検出するというサービスが登場しており、人に代わってAIが検品作業を行うことが可能になります。

AIが検品作業を代替することで、省人化が進むだけでなく、検品作業における人的ミスを軽減することができます。人手不足が課題の物流現場において、検品作業の効率化はますます注目されています。

AIロボットで労働力不足が解消できる

AIロボットの活用は労働力不足の解消につながるというメリットがあります。
たとえば、倉庫内で荷物を運搬するAMR(自律走行搬送ロボット)は、人間と協働することが可能なAIロボットです。これまで人が行ってきた運搬作業をロボットが担うことで、人が対応しなければならない業務が減り、労働力不足が改善します。

革新的なソリューションが生まれる

AIロボットの活用は革新的なソリューションが生まれやすいというメリットがあります。
AIは膨大なデータを解析し、機械学習する中で最適なソリューションを提案します。AIの処理能力は年々高度化しているため、AI独自のソリューションが生まれることも期待できます。

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物流AIを導入するデメリット

AIにはメリットが多い一方で、物流現場にAIを導入することで下記のデメリットもあります。

物流AIの導入デメリット(イメージ)
  • 初期の導入費用が高くなる
  • 物流現場で運用ルール変更が必要になる

初期の導入費用が高くなる

最新のAIシステム・AIロボットは、初期の導入費用が高額になるケースが多いことがデメリットです。しかし、導入して業務効率化が実現できると、高い費用対効果が得られる可能性もあります。導入費用とその後の削減コストをシミュレーションして、費用対効果をしっかり見極めてから導入を検討しましょう。

物流現場で運用ルール変更が必要になる

AIシステムを管理業務に組み込む場合や、AIロボットを物流現場に導入する場合は、今の運用ルールの変更が必要となることもデメリットです。

たとえば、在庫管理システムは出荷管理システムや基幹システム(生産から販売、会計、人事までの情報を扱うシステム)と連携することで、情報の一元管理ができるようになりますが、そのためには、今までの運用ルールを刷新する必要があります。

運用変更にかかる時間やコストもしっかりシミュレーションして、費用対効果をしっかり見極めてから導入を検討しましょう。

まとめ:AI活用で物流現場を効率化しよう

人手不足が深刻化しつつある物流業界において、業務効率化を実現するAIの活用が進んでいます。これまで現場のスタッフが行ってきた作業をAIに代替するだけでなく、ビッグデータ分析による正確な物流予測やシミュレーションをすることが可能になります。
導入を検討する際には、費用対効果をしっかり見極めてから進めましょう。

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