デバンニングとはコンテナから貨物を取り出す作業のことで、商品輸入時や仕入れ時に欠かせません。貿易や物流業務に携わる担当者は、物流工程を最適化するためにデバンニングの流れや課題を理解する必要があります。
本記事ではデバンニングについて、コンテナ荷下ろしの作業手順や注意点、課題を解説します。自社の物流業務における課題発見に、ぜひご参考ください。
目次
1デバンニングとは
デバンニングとは物流用語でコンテナから貨物を取り出す作業を指し、物流関係者の間では「デバン」と略して呼ぶこともあります。
輸入商品を荷下ろしする際や、海外拠点で生産した自社商品を国内の倉庫に移動する際に必要な作業で、物流工程では欠かせません。
デバンニングは重労働のため複数人で作業することが多く、貨物を移動させるためにフォークリフトなどの機械を利用することもあります。
コンテナに貨物を詰める作業「バンニング」
デバンニングと対になる言葉が「バンニング」です。バンニングとはコンテナに貨物を詰める作業を指す物流用語で、商品を輸出・出荷する場合に必要となります。
用語 | 概要 | 作業を行う場面 |
---|---|---|
デバンニング | コンテナから貨物を取り出す作業 | 輸入・仕入れ |
バンニング | コンテナに貨物を詰める作業 | 輸出・出荷 |
2デバンニング作業手順
デバンニングはコンテナが到着してから荷下ろしが完了するまでの一連の作業で、
具体的な作業手順は以下のとおりです。
- コンテナが到着する
- 必要に応じてスロープなどを設置し、作業環境を整える
- コンテナを開け、貨物の状態を確認する
- 荷下ろしを開始する(手作業またはフォークリフトを使用)
- 荷下ろし完了後、コンテナ内を軽く清掃する
コンテナと地面の間・貨物同士の間に段差が生まれると、足場が不安定になり、転倒などでケガをするリスクが高まります。そのため、荷下ろしを開始する前にスロープを設置するなど、作業環境を整備することが重要です。
なお、輸入時のデバンニングは、コンテナが到着してから原則2時間以内に終わらせることが一般的なルールとなっています(コンテナ運転手のデバンニング完了までの待機時間に制限がある)。事前に必要な作業人員を確保し、デバンニングを迅速かつ確実に行いましょう。
3デバンニングで注意すべきポイント
重い貨物の移動を伴う過酷な作業であるデバンニングを自社で行う場合は、下記の注意が必要です。
- 作業環境を整備する
- 慎重に作業し商品破損を防止する
作業環境を整備する
コンテナ内は高温になりやすく、特に夏場はコンテナ内の温度が40~50度と高くなる場合があります。このような過酷な環境下でデバンニングを行うと、作業スタッフが熱中症で倒れる危険もあるため注意が必要です。コンテナ内の温度が高い場合は、コンテナ内部を冷やしてから荷下ろし作業に入る、定期的に水分補給の時間を設けるなど、作業環境を整備する必要があります。
また、デバンニング作業中は高所作業による事故や、貨物落下などの事故が発生する恐れもあるため、必ず複数人で安全性を確保しながら慎重にデバンニングを行いましょう。
具体的には、下記のような事故の例があります。
- コンテナ内の貨物が頭上に落下する
- 落下した貨物の下敷きになる
- フォークリフトと接触する
- 足場が不安定で転倒する
慎重に作業し商品破損を防止する
デバンニング中に貨物が落下して商品が破損してしまうと、正規価格で販売できないばかりか、商品の損害賠償が発生する恐れがあります。限られた時間の中でも、商品を破損させないよう、コンテナの扉の開け方ひとつにしても慎重にデバンニングを行うことがポイントです。
しかし、人が作業する以上、商品破損のリスクはゼロにはなりません。万が一、商品に破損が見つかった場合はデバンニングを中断し、関係者へ状況を報告しましょう。
また、商品が貨物輸送中に破損したことが判った場合、貨物・運送保険を適用できるケースがあります。貨物・運送保険とは主に輸送中・保管中における貨物のさまざまなリスクによる損害をカバーできる保険のことで、貨物運搬中に予期せぬ事故で商品が損傷した場合に、その損害金を補償してもらえます。
デバンニング作業中に商品が破損したかどうかについては、調べてみないと分からないため、冷静に状況を確認し関係者に連絡することが大切です。
4デバンニングの課題
輸入・物流工程で欠かせないデバンニングですが、重量のある貨物を運ぶ大変な作業のため、事故のリスクが付きまといます。現在、考えられるデバンニングの課題は下記の3つです。
- 過酷な労働環境により人材が定着しない
- 作業時間がかかる
- 商品やコンテナを破損させるリスクがある
過酷な労働環境により人材が定着しない
デバンニングは作業スタッフに大きな負荷がかかるなど、過酷な労働環境を強いられる作業のため、人材が定着しづらいことが課題です。人材を定着させるためには、フォークリフトなど貨物運搬の機械を導入して作業スタッフの負担を少しでも軽減する工夫や、ロボットを導入して荷下ろし作業を自動化する工夫が必要です。
作業時間がかかる
輸入時のデバンニングは前述のとおり「コンテナが到着してから原則2時間以内に終わらせる」というルールがあります。しかし、重量のある貨物をコンテナから運び出す作業は過酷なため、2時間以上かかるケースもあります。
輸入時のデバンニングに2時間以上かかると遅延金などの追加費用が発生する場合があり、作業時間の短縮が課題となります。
デバンニングの時間を短縮する方法としては、事前に必要な人数を確保して効率的にデバンニングができるように教育する方法や、フォークリフトなどの機械を導入して作業の効率化を図る方法などが考えられます。
商品やコンテナを破損させるリスクがある
デバンニング作業中に商品やコンテナを破損させないように注意していても、商品破損のリスクはゼロにはなりません。商品を破損させた場合は損害賠償が発生し、またコンテナを破損させた場合は修理費用が発生します。このような費用は企業の収益を圧迫する原因となるため、デバンニングの課題として挙げられます。
商品やコンテナを破損させるリスクを防ぐには、作業スタッフが正確に作業できる手順を策定することに加え、荷下ろし作業を自動化するなど人的ミスを減らす対策が必要です。
5効率的にデバンニングを行う方法
デバンニング作業負荷を軽減し、時間を短縮するためにはデバンニングの効率化が必要です。効率的にデバンニングを行う方法として、下記の2つが考えられます。
- ロボットにより作業を自動化する
- 外注により自社の負担を軽減する
ロボットにより作業を自動化する
デバンニングを効率化する方法の1つとして、ロボットの導入が注目されています。
たとえば、川崎重工が2022年に発売したデバンニングロボット「Vambo」は、コンテナ内に自動で進入し、人の代わりに荷下ろしを行うことが可能です。Vamboは大小さまざまな貨物を1時間に最大600個、荷下ろしすることができます。
最大可搬質量 | 30kg |
---|---|
対応ケース寸法 | 最大:650mm(L) × 600mm(W) × 550mm(H) 最小:250mm(L) × 280mm(W) × 130mm(H) |
最大走行速度 | 3.6km/時 |
最大処理能力 | 600個/時 |
本体寸法 | 3,590mm(L) × 973mm(W) × 2,374mm(H) ※車載コンベア含まず |
ロボットによりデバンニング作業を自動化できると、人手不足の状況でも少人数でデバンニングを行うことが可能です。また、作業スタッフの業務範囲が限定されるため、事故やケガのリスクも減らせます。
外注により自社の負担を軽減する
取り扱う貨物の重量が重い場合 (20kg以上など) や、1コンテナ内の貨物が多い場合 (2,000個以上など)、また運搬だけでなく貨物の仕分け作業が必要な場合は、自社の業務負担が多くなります。重労働のデバンニングを無理に内製化するのではなく、専門業者へ外注することもおすすめです。デバンニングをプロに外注することでスピーディーかつ確実に作業ができます。
デバンニングの外注費用の相場は下記のとおりです。
コンテナのサイズ | デバンニングの外注費用の相場 |
---|---|
20フィート(全長約6m) | 約15,000円 |
40フィート(全長約12m) | 約20,000~30,000円 |
自社でデバンニングを行う場合は人件費がかかり、商品を破損させた場合は損害賠償が発生するリスクもあります。自社対応する場合の費用と比較して、外注費用の方が少ないと判断できる場合は、外注により自社の負担を軽減しましょう。
6まとめ:デバンニング注意点を理解して適切な仕組み作りを
デバンニングは商品の輸入・仕入れの際に欠かせない作業であり、自社で対応している企業も多く存在しています。しかし、重量のある商品の荷下ろしは作業負荷が大きく、作業スタッフがケガをするなどのリスクが伴います。過酷な労働環境により、人材が定着しないことも課題です。
このような課題解決には、ロボットによりデバンニング作業を自動化するなどの対策や、デバンニングを専門業者に外注することでスピーディかつ確実に作業を完了することも可能です。当社では物流に関するご相談を受け付けていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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