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在庫引当とは?考え方や重要な理由、効率的に行う方法をわかりやすく解説

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在庫引当とは?考え方や重要な理由

在庫引当とは、実在庫数から受注数を差し引くことを指します。在庫引当によって販売可能な在庫数を把握できるため、欠品の発生を防止し、また適切なタイミングで商品を仕入れることが可能となります。

本記事では、在庫引当の考え方や重要な理由、効率的に行う方法をわかりやすく解説します。在庫引当の方法を知ることで適正在庫の実現につなげられるため、ぜひお読みください。


在庫引当とは

在庫引当とは、消費者から受注した商品数を実在庫数から差し引くことを指します。
実在庫数が変化することはありませんが、すでに受注した分の在庫をほかの顧客に販売しないよう、あらかじめ差し引いておくことで適切な在庫管理が可能です。

在庫引当作業(イメージ)

実在庫数から引当数を引いた在庫数を有効在庫数と呼び、以下の計算式で表せます。

計算式:有効在庫数 = 実在庫数 - 引当数

例として、商品の実在庫数が100点あり、取引先から60点受注があった場合「100-60=40」で有効在庫数は40点となります。有効在庫数を計算することですでに受注が確定している60点を確保でき、残り40点が他の取引先の受注に対応できる在庫数であることがわかります。

在庫引当の考え方

在庫引当における引当数と有効在庫数の計算方法について、以下の例で考えます。

12/18~12/24 までの実在庫数(単位:点)
取引日付 仕入数 受注数 出荷数 実在庫数 引当数 有効在庫数
12/18 100 0 100
12/19 30 100 30 70 (=100-30)
12/20 30 70 (=100-30) 0 70
12/21 50 120 (=70+50) 0 120
12/22 80 120 80 40 (=120-80)
12/23 60 80 100 (=120+60-80) 0 100
12/24 100 0 100

上記のとおり、在庫の引当数は商品の受注があったタイミングで加算され、商品を発送したときにその分がマイナスされます。

一方、有効在庫は仕入れや受注のときに数値が変わる仕組みです。このように在庫引当を行うことで、新しく受注が来たときに出荷できる在庫数を把握できます。

在庫引当が重要な理由

在庫引当が重要な理由として、有効在庫数を正しく把握できることが挙げられます。
有効在庫数がわかることで、出荷前に今後受注が入った場合も対応できるかどうかを判断できるためです。

倉庫での在庫引当(イメージ)

有効在庫数を確認することによって、以下のことが可能となります。

  • 在庫不足による信頼低下を防止できる
  • 余剰在庫を削減できる

在庫不足による信頼低下を防止できる

受注が来た段階で在庫を確保するため、追加の受注分の商品を発送できなくなるリスクを軽減できます。有効在庫数を把握できていないと、以下の流れのようなトラブルが発生する可能性があります。

<例:トラブル発生の流れ>

  1. 実在庫数が100点あり、取引先Aからの60点の注文を担当者Xが受ける
  2. 別の担当者Yは在庫が100点ある認識でいるため、取引先Bから50点の注文を受けてしまう
  3. 合計110点の商品が必要なため、在庫数が不足する
  4. 結果、取引先Bの納期までに商品を発送できず、取引先Bから信頼を失う

上記のトラブルは実在庫数が100点あることから担当者Yが50点を発送できると判断し、受注したことが原因で起きました。もし1の段階で有効在庫数が40点であるとわかった場合、取引先Bの受注を断ることができます。

有効在庫数を把握することでリアルタイムで販売可能な在庫数がわかるため、欠品による信頼低下を防ぐことができます。

余剰在庫を削減できる

有効在庫数を把握することで実際に販売可能な在庫数がわかるため、余剰在庫を削減することが可能です。有効在庫数がわからない場合、現時点で仕入れが必要な点数を在庫数からしか判断できないため、欠品をおそれて多めに仕入れる可能性があります。

余分に仕入れた結果、余剰在庫となるため商品が滞留し、ムダなコストが発生します。
有効在庫数を確認することで適切な仕入数を把握でき、キャッシュフローの改善や在庫の管理コスト削減に有効です。

在庫引当のメリット

倉庫業(イメージ)

在庫引当を実施することで、以下の3つのメリットがあります。

  • 納品遅延のリスクを低減できる
  • 在庫情報を共有化できる
  • 在庫管理を効率化できる

納品遅延のリスクを低減できる

有効在庫数がわかることで受注可能な数量を把握できるため、受注後に納品できなくなるリスクを低減できます。また、適切な数量で商品を仕入れることが可能になります。欠品を予防し、納期までに商品を発送できることで顧客満足度の低下を防ぐことができます。

在庫情報を共有化できる

在庫情報を常に更新しておくことで、担当者全員がリアルタイムで在庫状況を確認できます。これによって、欠品や余剰在庫のリスクを防ぐことが可能となります。

とくに多数の商品を取り扱っている場合は、商品一つひとつの在庫を管理することが難しいため、全員が把握できる仕組みづくりが大切です。在庫管理システムを導入し、いつでも在庫情報を閲覧できる体制を整えることで、このメリットを最大化することができます。

在庫管理を効率化できる

有効在庫数がわかることで、倉庫担当者が商品の過不足をスピーディに判断できるようになるため、在庫管理の効率化が可能です。

たとえば、倉庫内に50点在庫があるとして、すでに受注が50点入っていた場合、有効在庫数はゼロのため新しく受注が入ったときは仕入れが必要です。在庫引当をしておくことで、慌てて仕入れをしなければいけない事態を避けることができます。さらには、仕入れのタイミングが遅れる場合、受注をキャンセルしなければならず顧客獲得の機会損失につながります。

倉庫作業者が在庫を確認したときに、在庫数が一定数ある場合でも、有効在庫数を確認することで、正しい仕入れのタイミングを判断することができます。欠品のリスクがあることを在庫管理の担当者に伝えることで早い段階で仕入れができ、次の受注までに間に合わせることが可能です。

在庫引当を効率的に行う5つのポイント

在庫引当を正確に行うだけで適切に在庫管理ができるわけではありません。

実在庫と帳簿上での理論在庫にズレがあった場合は、欠品や余剰在庫の原因になります。実在庫と理論在庫にズレがないように、以下のポイントを押さえて在庫管理を行いましょう。

  • 在庫データを管理するツールを導入する
  • 在庫の保管場所を明確にする
  • 在庫管理のルールを共有する
  • 定期的に棚卸しをする
  • 在庫管理のアウトソーシングを検討する

在庫データを管理するツールを導入する

入出庫履歴を記録し、在庫数を正しく把握する有効な方法としてデジタルツールの導入があり、すぐに導入できるツールとしてエクセルがあります。エクセルで在庫管理表を作成し、受注が来た際に在庫引当を行うことで、有効在庫数を把握できます。エクセルのマクロ機能を使わなくても簡単な関数で作成できるため、エクセル初心者でも対応可能です。

ただし、取り扱う商品が多くなるほど入力ミスやファイル紛失などのヒューマンエラーが発生しやすくなるため、エクセルでの在庫管理には限界があります。在庫管理をより正確に実施したい場合は、在庫管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

在庫管理システムとは、受注から出荷・その他のあらゆる業務における在庫情報を保有し、物流に関わるデータを一元管理できるシステムです。在庫管理システムでは有効在庫数や引当数が自動で算出できるため、多数の商品を抱えている場合でも、すべての商品の在庫数を正確に管理することができます。

在庫管理システムには受注内容を自動入力できる機能をもつものもあり、受注内容の入力ミスを大幅に削減することが可能です。また、在庫管理の担当者が毎回入力する手間を省くことができるため、業務効率化にもつながります。

在庫の保管場所を明確にする

在庫引当で在庫数を正確に把握できたとしても、在庫の所在地がわからなければ紛失の原因になるため、ロケーション管理を実施しましょう。

ロケーション管理とは、商品ごとに置く場所をあらかじめ決めて管理する在庫管理方法です。棚や倉庫に番号を振って、番号と商品を結び付けて管理します。商品と置く場所を共有することで、作業者全員が適切に入庫できるようになります。

在庫管理のルールを共有する

複数人でデータを管理する場合、データの重複や入力漏れ、入力ミスのおそれがあるため、理論在庫にズレが生じかねません。

ヒューマンエラーによる在庫差異が生じないよう、入力ルールを決めることが大切です。
「データ入力した時間や日時を記載すること」
「重複するデータがあった際は入力した人に必ず確認をとること」
などのルールを定めてミス発生を減らしましょう。ルールを定めたらマニュアルを作成し全員で共有します。

定期的に棚卸しをする

実在庫と理論在庫は、注意を払っていても在庫差異が生じる可能性があるため、定期的に棚卸しをして実在庫数を把握しましょう。

実在庫数が正しい情報になっていて初めて、有効在庫数を正しく計算することができます。
棚卸しは決算で資産を計上するためにも必要な作業ですので、3ヶ月ごとや半年ごとなどに分けて実施しましょう。

在庫管理のアウトソーシングを検討する

自社で在庫引当の実施や在庫管理をすることが難しい場合は、物流代行会社へのアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。

アウトソーシング先の物流代行会社の提案によって、適正在庫の実現につながるだけでなく、自社で在庫管理業務が不要になった分、販促などのコア業務に専念できるようになるため、売上アップも期待できます。

在庫引当を行う際の注意点

在庫引当によって正しい有効在庫数を計算できないと、欠品や余剰在庫の原因につながります。以下の注意点に気を付けて作業を行いましょう。

在庫(イメージ)
  • データの入力ミスに気を付ける
  • 実地棚卸でのミスに気を付ける

データの入力ミスに気を付ける

エクセルを用いる場合、データの入力ミスによって、在庫数にズレが生じる可能性があります。在庫数が正しくなければ有効在庫数を計算しても意味のない数値となってしまうため、慎重に入力する必要があります。

よくあるミスの1つとして受注キャンセルの連絡が来たときに、受注時に行った在庫引当を戻し忘れるケースがあります。できるだけ入力時のミスが起きないようにするためにも、全員で在庫データを共有して問題がないかを確認しましょう。
この点については、在庫管理システムを使用することで大幅に解消することが可能です。

実地棚卸でのミスに気を付ける

実地棚卸における在庫の数え間違いも在庫差異が生じる原因になるため、正確にカウントする必要があります。理論在庫数と実在庫数を照らし合わせ、ズレがある場合は再度カウントし直します。複数の担当者がダブルチェックして、正しくカウントされているかを確認するのも1つの方法です。

また、在庫数を正しくカウントしても管理表に記入ミスをする可能性があります。
商品の品番や外観を確認し、管理表の適切な場所に入力しているか必ず見直しましょう。

まとめ:在庫引当を理解して在庫管理の適正化を

在庫引当を行い有効在庫数を把握することで、欠品や余剰在庫のリスクを低減できます。
有効在庫数が正しい数値になるよう、実在庫と理論在庫のズレが生じないようにデータを管理し、商品の保管場所を徹底、ルール化しましょう。

自社で適切な在庫管理が難しい場合は、物流代行会社にアウトソーシングすることも1つの手段です。当社の物流代行サービスでは、在庫管理システムを活用した在庫管理を行い、ご要望に合わせて適正在庫を実現するご提案も行っていますので、お気軽にご相談ください。

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