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物流 (在庫管理)

滞留在庫とは?余剰在庫との違いやデメリット、未然に防ぐ方法を解説

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滞留在庫とは?未然に防ぐ方法

滞留在庫とは、仕入れから一定期間、販売や出荷されることなく倉庫に保管されている状態を指します。在庫を持ちすぎることによる経営上のリスクを事前に把握したい、もしくは実際に在庫管理の方法に悩んでいる企業の担当者もいるのではないでしょうか。

本記事では、滞留在庫について、余剰在庫との違いやデメリット、未然に防ぐ方法を詳しく解説します。滞留在庫へ適切に対処し、在庫管理を最適化したい企業の担当者は、ぜひご覧ください。


滞留在庫とは

滞留在庫とは、仕入れ後に販売や出荷されることなく倉庫に保管され、一定期間が経過した在庫の状態を指します。

滞留在庫の管理業務(イメージ)

仕入れから何日以上経過したものを滞留在庫とみなすかは企業や商品によって異なり、滞留期間を3ヶ月間としている企業もあれば、3年間としている企業もあります。

仕入れた商品が販売されずに長期間滞留すると、流行遅れや商品劣化などで、仕入値以上の価格で売ることが難しくなり、さらに保管コストも発生します。そのため、滞留在庫が発生しないよう事前に対策し、もし発生した場合にも適切な事後対応ができるような在庫管理をしましょう。

滞留在庫・余剰在庫・不良在庫の違い

滞留在庫・余剰在庫・不良在庫の違いは、以下のとおりです。

項目 意味
滞留在庫 入荷してから商品が一定期間動いていない状態
(売れる商品・売れない商品・良品・不良品を含む)
余剰在庫 需要よりも多く商品を発注してしまったために売れ残り、
倉庫に商品が保管したままになっている状態
不良在庫 在庫の品質が不良の状態、または在庫が売れない状態

滞留在庫とは商品が入荷して、倉庫から一定期間動きのない状態を指すため、余剰在庫が売れない状態が続くと滞留在庫となります。また不良在庫は、品質不良の状態や、在庫が売れない状態を意味します。

滞留在庫が発生するデメリット

滞留在庫が発生するデメリットは以下の3つがあり、未然に滞留在庫の発生を防ぐ対応が必要です。

滞留在庫の発生(イメージ)
  • キャッシュフローが悪化する
  • 保管スペースが圧迫する
  • 長期の保管で商品の品質が低下する

キャッシュフローが悪化する

滞留在庫が増えると、商品の仕入金額を回収できず、企業のキャッシュフローが悪化するリスクが高まります。長期の保管で品質が劣化すると、販売できない不良品となる可能性も高くなるため注意が必要です。

企業は滞留在庫の発生によって資金繰りを悪化させないために、滞留在庫を未然に防ぐ対策が必要です。

保管スペースが圧迫する

滞留在庫が増えると倉庫内の保管スペースを圧迫してしまいます。本来、滞留在庫が発生していなければ確保できたスペースが無くなるため、他の商品の在庫を増やせません。
在庫を十分に保管できない商品があると販売機会の損失につながります。

倉庫を借りている場合、保管スペースを広げるためには追加の賃貸料が発生してしまいます。また、在庫管理をアウトソーシングしている場合、在庫数が増えると費用が高くなるため、滞留在庫を増やさない対策が必要です。

長期の保管で商品の品質が低下する

商品が長期間にわたり売れず、倉庫に保管されたままの状態となると、品質低下や流行遅れで本来の価格で販売できないリスクが高まり、売れる見込みのない不良品になってしまいます。

長期の保管によって商品が不良品にならないよう、商品の生産数・在庫数を適切に管理し、滞留在庫の発生を防ぐ対策が重要です。

滞留在庫が発生する原因

滞留在庫の発生を未然に防ぐには、なぜ滞留在庫が発生してしまうのかを知ることが大切です。滞留在庫の主な原因としては下記の3つが考えられます。

滞留在庫の発生(イメージ)
  • 在庫管理が不十分のため
  • 発注・仕入数が需要に適していないため
  • 社内の部門間連携がとれていないため

在庫管理が不十分のため

在庫数を正しく把握しないまま商品を発注した場合、仕入数が過剰となり、余剰在庫が発生してしまうケースがあります。過剰に仕入れた商品は販売までに時間がかかり、滞留在庫となる原因となるため注意が必要です。

単純な作業ミスで在庫数が過多になるケースもあり、たとえば商品の発注時にデータを打ち間違えて大量の商品を仕入れてしまうケースが考えられます。まずは在庫管理の方法が不十分でないか、見直しが必要です。

発注・仕入数が需要に適していないため

消費者の需要よりも発注・仕入数が多い場合、一時的に販売できない商品が増え、滞留在庫が発生する原因となります。
また、販売機会の損失を恐れて、通常より多く商品を仕入れることがありますが、これも滞留在庫の発生原因となるため慎重に判断しましょう。

社内の部門間連携がとれていないため

仕入担当者が持つ情報だけで発注数を判断すると、実際の需要にそぐわない仕入数となる可能性が高まります。社内の部門間で連携をとり、さまざまな情報をもとに発注・仕入数を決めることが大切です。

なお、社内の他部門(製造・営業・経理・マーケティング部門)は在庫に対するインセンティブが異なる点に注意が必要です。売上高で評価が決まる営業部門は、販売数を実際より多く見積もる傾向があり、一方で無駄に材料を消費したくない製造部門は、生産数を増やすことに消極的な傾向があります。

このように在庫へのインセンティブが異なる部門間で上手くコミュニケーションをとって連携し、適切な在庫数を予測することが重要です。社内データだけでなく外部の市場予測データなども参照することで、需要に対して最適な仕入数を判断できるでしょう。

滞留在庫かどうかを判断する計算式

保管されている商品を、どのタイミングで滞留在庫とみなすかは企業によって異なりますが、在庫回転率を計算することで滞留在庫の判断がしやすくなります。在庫回転率とは「一定期間内に何回在庫が入れ替わったのか示す指標」で、金額から求める場合は以下の式になります。

計算式:在庫回転率 = ある商品の1年間の売り上げ ÷ 仕入金額
たとえば、ある商品の1年間の売り上げが24万円で、仕入金額が2万円だった場合、以下のように計算できます。

ある商品の在庫回転率
1年間の売り上げ 仕入金額 在庫回転率
24万円 2万円 12(24万円÷2万円)

在庫回転率が低い、つまり販売期間が長い商品は、滞留在庫として管理するのが適切です。
商品によって適切な在庫回転率は異なるため、商品ごとに計算する必要があります。

滞留在庫が発生した場合の対処方法

注意して在庫管理をしていても、需要を予測できずに滞留在庫が発生する場合があります。
ここでは滞留在庫が発生した場合の対処方法を確認しましょう。滞留在庫への対処方法は下記の3つがあります。

滞留在庫の対処方法(イメージ)
  • セールで販売する
  • 滞留在庫を処分する
  • 専門業者に在庫の買い取りを依頼する

セールで販売する

長期の保管によって品質が落ち、元々の価格で販売できなくなった滞留在庫をセールで販売する方法があります。アパレル業界であれば、トレンドや季節が変わる前にセール期間を設け、スーパーであれば賞味期限の近い食品を割引して販売します。

セール販売では価格を大幅に値引きして販売することになりますが、仕入原価を少しでも回収し、企業のキャッシュフローを改善したい場合におすすめの対処方法です。

滞留在庫を処分する

値下げしても売れる見込みのない商品であれば、廃棄専門の業者に依頼して、廃棄処分する方法があります。滞留在庫を廃棄すると仕入原価を回収できない一方で、スピーディーに滞留在庫を処分でき、倉庫の保管コストを削減できる点、保管スペースが広がる点がメリットです。

なお、滞留在庫の破棄には減税効果もあります。通常、棚卸しで確定した在庫は会社の資産として価値が認められるため、在庫(=資産)が増えるほど、税金は増えていきます。

滞留在庫も例外ではなく、利益を生む可能性が低いにもかかわらず、他の在庫と同様に税金がかかってしまいます。そのため、滞留在庫を処分することは在庫にかかる税金を減らす効果があるのです。

専門業者に在庫の買い取りを依頼する

専門業者に買い取りを依頼して、滞留在庫を処分する方法があります。消費者に直接売れない商品でも、その商品を必要とする業者は意外と多く、幅広く買い取り業者を探すのがおすすめです。

買い取り業者との交渉が成立すると、滞留在庫を現金化することが可能なため、キャッシュフローを改善したい場合におすすめの対処方法です。ただし、自社商品が安値で出回ることでブランド価値が下がるリスクもあるため、慎重に判断しましょう。

滞留在庫の発生を未然に防ぐ方法

滞留在庫の発生を未然に防ぐためのおすすめの方法は、下記の3つです。

  • 適正在庫を計算する
  • 定期的に棚卸しを行い、在庫数を把握する
  • 正確な在庫管理の仕組みをつくる

適正在庫を計算する

まずは自社商品の適正在庫の数量を把握することが大切です。一般的に適正在庫は、サイクル在庫と安全在庫の合計で計算することができます。

用語 概要
サイクル在庫 発注から次の発注までの期間に消費された在庫÷2で計算される在庫数。
たとえば、毎月1日に商品を発注するのであれば、
15日間に消費される在庫数量がサイクル在庫となる
安全在庫 消費者需要の変化やリードタイムの変化に対応するために備える在庫

天候・季節などの外部要因によって需要が想定より増加することも考えられるため、通常のサイクル在庫に加えて安全在庫も確保しておきます。

定期的に棚卸しを行い、在庫数を把握する

現在の在庫数を正確に把握できていないと発注数を見誤り、滞留在庫の発生や在庫不足のリスクが高まります。在庫数を正確に把握するためには、定期的に(半年に1回、四半期に1回など)棚卸しが必要です。滞留在庫の発生状況を確認できれば、対処方法について社内で具体的に話し合うことができます。

正確な在庫管理の仕組みをつくる

棚卸しを行った後も、仕入れ・販売のたびに変化する在庫数を正確に管理するのがポイントです。なお、仕入数や販売数を手作業で管理する体制では、数値の入力間違いなど人的ミスが発生しやすくなります。そのため、商品の受注から発送まで一元管理できるシステムを導入し、自動で在庫数を管理する仕組みをつくるのがおすすめです。

またリアルタイムで在庫状況を管理できるシステムなら、滞留在庫が発生していないかをモニタリングできます。

まとめ:適切な在庫管理で滞留在庫を発生させない
仕組みづくりが重要

適切な在庫管理で滞留在庫ゼロ(イメージ)

滞留在庫が増えると、本来の価格で商品を販売できないリスクや保管スペースが圧迫されるリスクが高まります。また、黒字経営をしている順調な企業でも滞留在庫を抱えてしまったために黒字倒産するケースもあり、適切な在庫管理で滞留在庫を発生させない仕組みづくりが重要です。

滞留在庫を未然に防ぐためには、仕入れから販売までの商品の動きや在庫情報を可視化した上で、客観的なデータや需要予測を基にして仕入数を判断することが大切です。

当社では長年の物流支援実績から培った知見とノウハウで、在庫管理から発送までの業務を行っています。在庫管理のお悩みがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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